なぜオオカミ再導入が必要か③~シカ侵入で予想される尾瀬の未来
「シカ食害 国の早急対策求める 尾瀬山開き 山小屋組合長が見解」
2012年5月23日
尾瀬の玄関口にある片品村の大清水湿原のミズバショウ約二万株が野生のシカに食い荒らされ、壊滅状態になった問題で、尾瀬山小屋組合の関根進組合長は二十二日、「尾瀬のシカの食害は憂慮に堪えない問題で、環境省も喫緊の課題として対策を講じてほしい」との見解を示した。
同日の尾瀬の山開き式の会場で東京新聞の取材に答えた。
関根組合長によると、尾瀬のシカの食害は十年以上前から問題になっていたが、こ
こ一、二年は深刻な状態で、尾瀬ケ原ではミズバショウだけでなく、ニッコウキスゲ
やリュウキンカなどの貴重な草花が食べられているという。
「大清水湿原の奥にはシカよけのネットを設置していたが、シカがネットから離れ
た別の侵入ルートを見つけ、入り込んだらしい」と関根組合長。「シカを別の場所に
誘導する方法を考え、シカと人間の共存を模索したい」と語った。
山開き式であいさつした福島県檜枝岐村の星光祥村長も「ニホンジカの被害はます
ます深刻化している。阻止しなければならない」と訴えた。 (山岸隆)
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120523/CK2012052302000146.html
この記事は、同じ東京新聞が、
「シカの食害 壊滅状態 片品・大清水湿原のミズバショウ」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120518/CK2012051802000142.html
5月18日に報じています。その追加取材を行ったもののようです。
そして、環境省は、尾瀬でニホンジカの捕獲作業を予定しています。
【環境省檜枝岐自然保護官事務所より)ニホンジカ捕獲作業のお知らせ】
ニホンジカによる植生被害が深刻な状況にある尾瀬国立公園において、下記の日程にてニホンジカの捕獲を実施します。
安全には十分配慮して実施しますが、あわせて皆様のご理解とご協力をお願いします。
[銃猟]
実施期間:5/7~5/20実施場所:尾瀬沼、尾瀬ヶ原、御池周辺地域捕獲手段:銃
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[わな猟]
実施期間:5/21~7/20 10/1~10/31
実施場所:大江湿原、浅湖湿原及びその周辺地域
捕獲手段:足くくりわな
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□問い合わせ
環境省檜枝岐自然保護官事務所(電話:0241-75-7301)
檜枝岐村役場(電話:0241-75-2500)
いま尾瀬に侵入しているシカは約1000頭と推定されています。(環境省)
その行動パターンは宇都宮大の小金澤教授によれば、冬季に日光の麓や足尾で越冬しているグループが、夏季に尾瀬から奥只見にかけて移動し、春子供を産んで、夏の子育て期間を過ごします。
シカは生まれた場所に固執する傾向があり、尾瀬で生まれたシカは尾瀬に帰ろうとしますから、1000頭が尾瀬で春に子供を生めば、そのシカはまた尾瀬に戻ってきます。
こうして年々シカは増えてきました。小金澤教授の頭数推移の推定では、この数年急増の気配を見せ、尾瀬ヶ原や尾瀬沼でも、シカの痕跡は誰にもはっきりと見えるまでになっています。
今までは、国立公園ということもあり、尾瀬でのシカ対策は、遅々として進みませんでした。国立公園に含まれない福島県側の一部地域でわなによる捕獲が行われていましたが、侵入防止効果はほとんどなかったと聞いています。頭数減にもつながっていません。
その結果、シカの急増を憂慮して、環境省が重い腰を上げたものと思われます。生息頭数を抑えるために、捕獲を開始するには遅すぎるくらいではありますが、まだ間に合うレベルのシカの頭数かもしれません。
問題は、この深い山でどれほどの捕獲数が得られ、それが継続できるのか、ということです。
また、人間が設定した管理エリアの中は目標が達成できたとして、その外側はどうするのか、という問題もあります。尾瀬でいえば、尾瀬国立公園内で、仮に目標が達成されたとしても、足尾で越冬し、奥只見で夏を過ごすグループにはほとんど影響がなく、そこで増えたシカはまた尾瀬に侵入してきます。
足尾はイヌワシの生息が確認されているため、銃による捕獲ができません。奥只見は、尾瀬にもまして険しい山が続き、広範囲の捕獲作業はまず不可能と思われます。
他の農業地域や日光で使われている防鹿柵も同様です。広大な尾瀬の周囲に、自由に動き回るシカの侵入防止柵を設置することはできませんし、尾瀬だけ守れば、それでいいのか、上記のように管理エリアの外側は野放しでもやむなしとするのか、という疑問も湧いてきます。
尾瀬では、今まで他の地域で取られていた方法は、いずれも効果は期待できません。
尾瀬のシカがこのまま増え続けるとどうなるのか、さまざまな地域の進行状況から尾瀬の未来を想像すると、こうなります。
(あくまで筆者の想像によるものです)
① 湿原にシカの踏み跡
尾瀬(2010年)
②高山植物消滅
日光白根山(1984→1994)
白根山のシラネアオイは10年で消滅した。
③ 樹皮剥ぎ
天城山(2010)
④樹木の枯死
大台ケ原(2006-パネルは1964)
⑤湖水が土砂で埋まる
静岡県伊東市松川湖(2005)
⑥土壌流亡
小笠原(1984)
小笠原では、ヤギが野生化して増え続け、下の写真のような問題が起きましたが、全頭捕獲により回復しています。
これが極端に悲観的なシナリオだとは思いません。
人間の手による自然界の調節は、もはや不可能です。
頂点捕食者オオカミの復活により、食物連鎖を復元し、生態系の修復を図らなければ、問題の解決はありえない、と思います。




































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