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« オオカミ再導入にいくらかかるか~イエローストーン再導入事例の【事前】調査報告から | トップページ | なぜオオカミ再導入が必要か⑤~④の補足:最近の獣害ニュース »

2012年6月22日 (金)

なぜオオカミ再導入が必要か④~有機農業とオオカミの関係、そしてツルネンマルテイさんのこと

農業とオオカミ再導入は密接な関係がある。

南アルプスのような高山から、森深い低山、谷が切れ込んだ中山間地、なだらかな高原、草深く水路が巡る盆地、広大な海へとつながる平野、すべてつながっているからだ。


一般の農業を担い手たちは、広い土地で大規模化を図る。

有機農業を新たに志す人たちは景色のよい、山も川もあり、さわやかな風の吹く山あいの土地を探すことが多い。

 今の日本の自然の中で、食物連鎖のつながりが途切れてしまっていることはだいぶ知られてきた。オオカミという、動物の世界でも有蹄類を食べることにかけては第一人者である「頂点捕食者」が昔、日本の生態系には君臨していた。

その頂点捕食者を失って
100年。自然にとっては短くとも、人間にとっては長い年月をかけて、頂点捕食者を失った意味が目に見えてきた。
ある特定の動物だけが増えて、周囲に重大な影響を与えるようになっている。



 ある動物の増減をコントロールするものは、誰なのか、研究者の間でもまだ論争が絶えない。

動物の個体数をコントロールするのは、その動物が食べるエサの量だという説。古くからの考えである。これをボトムアップ理論という。

 もう一つは、動物の個体数をコントロールするのは、捕食者、特に頂点捕食者だという説。これは最近40~50年くらいの間に広まり始めた理論。トップダウン理論という。



 どちらが正しいのか、研究者の間でも論争が続き、決着がついていないらしい。


ボトムアップで、エサの量がその動物の数を決めるという理論は、それは正しい、としか言いようがない側面もあるが、
その結果は人間の置かれた環境に大きく影響する。



エサが不足してシカが減った例が日本にもある

ただし、その結末は日本人にとっては悲劇を予感させる。

宮城県の金華山島という小さな島には、今も200~500頭のシカがいる。
捕食者は当然いない。この島は神域であるから、狩猟者も、いない。シカにとっては天国のような島だったのだが、この島には、500頭以上のシカは棲めないらしい。

1984年と、1997年の2回にわたって500頭まで増加したが、そこまでの増加を自然は許さなかった。増えすぎたシカは全島で自分たちの食べるエサを減らし続け、ついに飢餓が始まり、84年、一度に約半数が餓死することとなった。
250頭まで減ったシカは、すぐにまた増え始め、13年後に再び500頭まで到達したときに、またもや大量餓死によって、半数まで頭数を減らした。

いま金華山島は、昔の植生を失い、シバやススキの目立つ草原や、シカの好まない植物だけがわずかに繁茂し、樹木もシカに刈り込まれたような形をしているらしい。いまや金華山の研究者の主要なテーマのひとつが、シカによる植生の改変ということになっている。


エサの量が動物をコントロールするとは、こういうことなのだ。

本州島や北海道の広さは、金華山島の比ではないから、増えた増えたといっても、すべてを食べつくすまでには、まだ時間がかかる
。時間はかかるが、必ず全土、全山に広がるだろう。

低山で増え、高山の植物を食害し、里山に押し出してくる。やがて平地にもやってくる。

中山間地の農業は、この圧力に負ける

中山間地に多い有機農業も大きな影響を受ける

防除の費用をかけられるほど大規模化した農家も少ない。

イノシシは平野部まではなかなか出てこないが、シカは広い畑にも平気でやってくる

北海道の牧草地は、シカにとってみれば気持ちよくエサを食べられる草原に見えるだろう

ボトムアップ、つまりエサがシカの頭数をコントロールするのを待つということは、日本の豊かな緑を失う、ということなのだ。

その時期は間近に近づいている。

高山のシカ。南アルプスの稀少な高山植物は、既に柵の中でしか見られない。

__3           

森深い低山のシカ対策。ここにはイノシシもサルもシカもいる。食害を防ぐには、人間と作物がオリの中に入らなければならない。

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Photo

いわゆる里山のシカ対策の数々。

宮崎学 森の動物日記 イマドキの獣害最前線

http://fireside-essay.jp/modules/miyazaki/shika/307.html

北海道富良野市では、シカ対策にと、市会議員の今利一議員が公費を使って農地を柵で囲う政策を進めた。その結果、牧草畑の収穫が2倍に増えたので農家が驚いた。こんなに食われていたのか。単位面積10a)あたり2トンが4トンになった。柵以前はその分がシカの胃袋に入っていた。

 ボトムアップや、大雪などによる自然調節ではシカの爆発的な増加を抑えられないのだ

少なくとも適切な頭数に収斂してくるようなことはない。

もう一方の理論、捕食者によるトップダウン効果は、イエローストーンで結果が見え始めている

シカの頭数が減り、植生が回復し、植物に依存する鳥や昆虫、シカが水辺の樹木を食べつくし、ダムをつくれなかったビーバーも戻ってきた

ビーバーが戻ると川にダムを作り、水をせき止める。そのダムに憩う水鳥や魚も種類が増えた

イエローストーンのオオカミ復活の影響を調査した水生生態学の研究者は言っている。
         


「驚いたことに、オオカミが川まで
管理していたのだ」(捕食者なき世界)

 

捕食者の存在が生態系を安定させ、人間社会への影響を軽減する。
オオカミを避けて畑に出てくるシカから、畑は守らなければならないかもしれないが、全体の頭数は減ることになり、奥山まで遠征してどれが本業かわからないような活動をする必要はなくなるはずだ。
                            

オオカミは農業の、有機農業の味方なのだ。

                                       



そのことを直観として理解してくれたのが、ツルネンマルテイ議員(参議院)だ。
ツルネン議員は知る人ぞ知る有機農業推進法の立役者の一人である。

2年前、議員会館に面会に行き、協力を約束していただいた。

そのツルネン議員も、面会の最初にこう言ったものだ。

「資料は読ませてもらいました。お考えはわかりました。それで、私に何をしてほしいですか?」


内心で、違う!あなたに期待しているのはそんなことじゃない、と思いながら、


「シカは増え続けています。奥山で繁殖して、里山に押し出してくるんです。」


と言った。
それだけで十分だった。


次の瞬間、目を見開き、自分の頭を指差してツルネンさんは言った。


「わかりました。いまピンとインスピレーションが来ました。これは私のミッションです。使命と感じました。やりましょう」


 

議員会館のツルネンさんの部屋のソファに座って、名刺を交換して、5分と経っていなかった。

自らの使命として行動してくれる議員は、ツルネンさんが初めてである。

有機農業とオオカミの関連を直観的に、ストレートに理解した人は、日本の国会議員には他にいない。



スパークツル
2011年3・4月号

http://homepage2.nifty.com/yugatsuru/spark/s_56/spark56_1.html

 

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コメント

棚田のお米が美味しい理由の一つは、豊かなおいしい水が手に入るからです。
 棚田の保全にオオカミ復活。

「棚田保全にオオカミ復活」
その台詞、使わせてください。

こちらのブログに、オオカミ関係のNABUの記事訳を載せました。
お時間のある時に、ご覧ください。

棚田の保全と、里山再生。これらの活動をしている団体にも使われるようになってほしいですね。
 オオカミ復活

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