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2012年8月

2012年8月22日 (水)

森の亡霊 四国:徳島高知県境と四万十川源流のシカ被害

徳島と高知の県境に三嶺(みうね)という山があります。三方から尾根が集まっているピークだから三つの嶺、徳島側からは「みうね」、高知側からは「さんれい」と読むそうです。

地図上では、東へ尾根をたどると徳島の明峰剣山、南へ下ると白髪山、東南方にたどると石立山です。

下のブログに、この三つの山の山頂付近の様子がレポートされています。

三嶺(みうね)の森をまもるみんなの会ブログ

http://sannreiminnnanokai.blog.fc2.com/

カヤハゲという地点には、5つの防鹿柵が設置され、その柵の中だけで植生が回復しています。悲しい光景です。


三嶺の森をまもるみんなの会HP

http://sanreiminnanokai.web.fc2.com/

                                     
                                 

四国の島の西側にも同じような場所があります。

四万十川の支流黒尊川の源流に三本杭山山頂です。地図上では鬼が城山を経て宇和島方面に下るルートがあるようです。

数年前に森林総研が山頂の調査を公表し、シカの食害が公に知られることになりました。

森林総研四国支所 滑床山(三本杭山)黒尊山国有林のシカの影響

http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/sm/sm9/sm9_4-5.pdf


                     

その後の動静はわかりませんでしたが、どうやら山頂周辺に防鹿柵を厳重に張り巡らせて植生を保護することにしたようです。

その保護の結果がこのレポートに報告されています。


                           

四万十の風音 森&川だより

http://www.rinya.maff.go.jp/shikoku/simanto_fc/pdf/sinsen32.pdf

この文書の中には、植生の回復状況の報告とともに、防鹿柵の出入り口の写真が掲載されています。



アメリカでシカの食害にあった森林を前に、ジョン・ターボー博士はこう言われたそうです。

(ポトマック河畔は)戦火に焼かれたようだった。森の大部分は食い尽くされて地面がむき出しになっていた。もはや森の亡霊と化していた。すべてはシカのせいなのだ(ジョン・ターボー=プリンストン大学教授)

 

彼が見ていたものと同様に、四国の大地は「森の亡霊」と化しています


すべては、シカのせいなのだ。さらにさかのぼれば、生態系のコントローラーであるオオカミを絶滅させたせいなのだ。

                  

食物網をパトロールする捕食者がいない状況下で、「私たちが守ろうとしているのは、自然がみずから管理できる自立した生態系でなく、既に崩壊し、自力では立ち行かなくなった生態系なのだ」(進化生物学者ジャレドダイアモンド



             

2012年8月18日 (土)

エゾオオカミ物語

Picture071412_114501

ある雪の夜、エゾフクロウのおじさんがエゾモモンガの子供たちに語って聞かせる蝦夷が島の歴史物語です。たった

100年前、エゾオオカミは絶滅してしまいました。それは人間がエゾオオカミのえさであるエゾシカを獲って減らしてしまったからです。そのためエゾオオカミは牧場を襲い、人間に憎まれて殺されてしまったのです。

 そのつけはいまになって人間を襲っています。天敵であるエゾオオカミがエゾシカを食べなくなったため。エゾシカが増えて、人間が困っているのです。



                     

北海道の野生動物の本当の歴史をエゾフクロウのおじさんは教えてくれます。

たった一つの疑問を除けば、この絵本は正しい生態系の姿をこどもたちに伝えてくれます。

その一つの疑問とは、、、、、言わないほうがいいかもしれません.

2012年8月 8日 (水)

捕食者なき世界~捕食者なき日本

「捕食者なき世界」(ウィリアム・ソウルゼンバーグ)は日本への教訓に満ちています。

この本に書かれていることは現在の、あるいは数年後十数年後、数十年後の今の日本です。

著者は、数十人の研究者にインタビューを試み、様々に印象的な言葉を引き出し、そして文章にしています。日本の自然の現状を思い浮かべながらかみ締めて吟味したい重い内容を含んでいます。

この本を通じて、アメリカ人の研究者たちは、こう訴えています。

「生態系は複雑で、頂点捕食者を欠いた生態系では何が起きるのか、まだわかっていない。現在のところ、これほど人間にとって悪い影響が出ている」

ところが、ここに描かれたのと同じことがおきている日本では、頂点捕食者について研究者や、環境行政の専門家でさえ逆のことを言います。

「生態系は複雑で、オオカミを野生に戻すなんてことをすれば、何が起きるかわからない。検討の俎上にも上げられないし、考えることさえするべきでない」

    
どちらが正しいのでしょうか。

             

この本を自然保護に関心のある誰もが読んでほしいと思います。

私自身もこの本に登場する研究者一人ひとりに尋ねてみたい。日本の自然を見たときにどう感じるか。

尊敬すべきアメリカの生態学者たちのインタビュー、あるいは調査結果の記述を、日本の各地の状況と比較してお読みください。

(ポトマック河畔は)戦火に焼かれたようだった。森の大部分は食い尽くされて地面がむき出しになっていた。もはや森の亡霊と化していた。すべてはシカのせいなのだ(ジョン・ターボー=プリンストン大学教授)
 

⇒天城山

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/34323886.html

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/34299072.html

(シカに荒らされた)そのような森はいくらでもある。メリーランド州のカクトテイン山脈国立公園、ヴァージニア州のシェナンドーア国立公園、テネシー州のグレートスモーキー山脈国立公園、コロラド州のロッキー山脈公園まで行ったとしても、シカやワピチの群れが何者にも邪魔されず森の次世代を担う若木を食べている。(ジョン・ターボー)

⇒神奈川県・丹沢

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/32829787.html

 

オジロジカは、適応力があり、雑種のようにたくましく、驚くほどの広食性の草食動物で、草、つぼみ、花、胞子、果実等々、多種多様な植物と菌類を食べる。本来多産な動物で、栄養状態がよく、捕食者に追われることがなければ、生後1年たたないうちに子どもを産み、壮年期には一度に2頭から3頭を出産し、環境に恵まれれば、オジロジカの群れは2年で二倍に増える

「仕事であれプライベートであれ、ドイツの森を巡っていると、誰でも数日たたないうちに、狩猟鳥獣と森林を人為的に管理すれば結局鳥獣も森も破壊してしまうことに気づいて暗い気持ちになるだろう(アルドレオポルド・1935年ドイツに招かれたときの感想

⇒山梨県・早川町

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/33129583.html

 

ウォラー、アルバーソン:ウィスコンシン大学の3人の若い植物学者のうちの一人)「わたしは幼いころからイトスギの茂る沼地は手入れされた公園のように林冠が開けていてずっと遠くまで見渡せる場所だと思っていた」が、「ところがメノミニ先住民居留地では1.5m先も見えなかった。イトスギの若木が茂っていたからだ。なんてことだ!これがイトスギの茂る沼の本来の姿なんだ」

⇒三重県・紀伊半島

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/32839430.html

             

●ヴァージニア州西部にあるモノンガヒラ国有林の奥深く、これといった特徴のない盆地には、アメリカにおける希少ラン保護の未来を象徴しそうなものが立てられてる。そこは国内で新たに二ヶ所見つかったアメリカアツモリソウの自生地の一つだが、そのランは、サメ除けの檻に入ったダイバーのように高さ2.5mのフェンスでシカから守られているのだ。(ウェスリアン大学のラン専門家・キャシー・グレッグの調査地)
            

⇒高山植物はオリの中

http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2012/05/post-0585.html

                 

●(引退していた野性動物生態学者アール・ホーネットが集めた狙撃手らは)夜陰にまぎれてハントリーメドウズ公園に入っていった。頭上ではヘリコプターがホバリングし、サイレンサーをつけた高性能ライフル、赤外線暗視スコープでシカの頭に狙いをつけ、一発で仕留めた射撃が始まるとシカの数は減り始めた。と言っても、我慢ならないほど多かったのが、途方もないほど多い に変わった程度だった

 

⇒知床ルサ地区におけるシャープシューティング

http://hokkaido.env.go.jp/kushiro/pre_2010/1125a.html

               

食物網をパトロールする捕食者がいない状況下で、「私たちが守ろうとしているのは、自然がみずから管理できる自立した生態系でなく、既に崩壊し、自力では立ち行かなくなった生態系なのだ」(進化生物学者ジャレドダイアモンド

               

●(100年ほど前に軽率にも本土の人が島にオグロジカを数頭放ち、過剰繁殖という生態学の放置実験を始めてしまった)ハイダグワイの森では、50年以上にわたってシカに若芽を食べられた結果鳴鳥の種の最大4分の3が消え昆虫の種6分の1に激減した。多くは花粉の媒介者なので、植物が実を結ばなくなる。ハイダグワイの荒廃を見た研究者は鳴鳥と昆虫の衰退はシカのせいだと考えるようになった。(フランスの生態学者ジャン・ルイ・マルタンの調査地)

                

犯人は増えすぎたヤギ 小笠原聟島の生態系破壊

 

http://www.japan-wolf.org/

               

 

●「今わたしたちにいえるのは、捕食者を締め出すと高くつくということだ。森林野生動物も犠牲になる。オオカミを追い出すと、鳥や植物など多くのものを失うことになるだろう。なぜなら、オオカミが自然を管理しているからだ。驚くかもしれないが、わたしたちが調べたことをよく検討すれば、誰でも、過剰なシカがもたらした問題をオオカミは確かに解決するし、場所によってはそれが唯一の解決策なのだと悟るだろう」(フランスの生態学者ジャン・ルイ・マルタン)

                     

10年がたち、ウォラーとアルバーソンは再び同じテーマの論文を発表した。数々の証拠を集め、「状況は許しがたいほどに悪化している」と、前にも増して厳しい口調で警告した。森をくまなく調査したが、どこでも古木だけで若木は育っていなかった。森はゆっくりと死に向かっていたウォラーアルバーソン

                          

(若い3人の植物学者は)「シカが増えすぎた森:ウィスコンシン北部への周辺効果」1988ウィスコンシンの森で見たことに加えてネブラスカやペンシルバニア、ロングアイランドの研究からも証拠を引き出した。種の絶滅、森の衰退、ライム病の蔓延、すべてにシカの過飽和があったウォラーアルバーソン

 

⇒屋久島

http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2012/03/post-7b6e.html

                      

●肉食動物がいなくなり、ハンターが締め出され、草食動物にとって唯一の危険因子が自動車だけになった森は、どこも深刻なダメージを受けた。そのような状況がほとんどの国立公園で起きていた。シェナンドーア国立公園のビッグメドウ湿地のシカは、個体密度が1平方マイル150頭から200頭にもなり、キャンプ客が与えるスナック菓子で肥え太った。公園を管理する生物学者は、世界でその湿地にしか生えていない希少な植物群落を守るために緊急出動した。シェナンドーア公園の野生動物を研究するロルフ・グブラーは「わたしたちはモンスターを作ってしまったのだ」と嘆く。

                  

                    

滋賀県高島市朽木  下層植生が失われて昆虫が半減している

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120807ddlk25040510000c2.html
          

滋賀県高島市朽木  シカが下草を食べ、低木の枝葉を食べ、亜高木の樹皮をかじり、高木を這(は)うツル草を食べ、さらには落ち葉まで食べているという

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120807ddlk25040510000c.html

               

テネシー州グレートスモーキー山脈国立公園の西側にある渓谷、ケーズコープは毎年200万人の観光客が訪れるが、そこで貴重なものが失われつつあることに気づいている人はほとんどいない1940年に公園が開設されたとき、ケーズコーブはエンレイソウやスプリングビューティが多いことで知られていた。しかし現在、植物学者はエンレイソウを探すのに苦労している。1970年に記録された野性の花のうち、46種が2004年までに姿を消した。すべてオジロジカが好む植物だった。

ちょっと変だぞ日本の自然~奥日光の自然が大ピンチ

 

http://www.youtube.com/watch?v=CcWF7HjZfM8

                              

弱いオオツノヒツジは群れの仲間に比べて逃げ足が遅く、持久力もないため、おのずと最初のエサになる。捕食によって弱い個体や病気の個体が除かれるので、一見有害に見える捕食者の存在が、長い目で見れば種にとって有益になると一般に考えられている(野生生物学者アドルフ・ムーリー)

                    

(リップルとペシュタの調査では)グランドティトン国立公園では、長年にわたってオオカミとハイイログマとハンターがいなかったためヘラジカの密度が5倍になり、川沿いの森はぼろぼろになり鳴鳥の多くが姿を消した。ところがYSのオオカミがやってくるようになると鳥たちも戻った

                         

(YS)「ヤナギやハアコヤナギやポプラはワピチの食べられる高さから上は成長できなくなっていたが、今では回復しつつある。すべてはある出来事と同じ時期に始まった。オオカミの駆除と導入だ」

                       

数十年後には、エバグレーズ国立公園の湿原の生態系にとっての水と同じくらい、イエローストーンにとってオオカミがかけがえのない存在であることが証明されるだろう」(ダグラススミス・再導入を実際に手がけた研究者)

           

⇒長野県知事の答弁

 http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/35456638.html

 新しい種を導入することは、生態系の撹乱要因になるので、慎重に考えなければならない

環境省は生態系保全の立場から、否定的な見解をとっている

                 

 

「私はこれまでの研究人生を通じて、オオカミが川の性質をコントロールしているなどとは予想もしていなかった。人生を通じて川のために働いてきたが、ここでは四足の動物がそれをやっているのだ。じつに驚きだった。オオカミが川を管理していたのだから」(ロバートペシュタ:水生生態学者)
                          

 

***************************                                      

「捕食者なき世界」に見る景観は、そのまま今の日本です。日本の地名を置き換えればそのまま通じます。日光、大台ケ原、天城山、屋久島、霧島、祖母傾、櫛形山、雲取山、和名倉山、南アルプス、そのうち北アルプスも白神もその列に加わることになります。捕食者のいる生態系を再構築しなければ


                                

2012年8月 1日 (水)

生物多様性の危機とは~二次的絶滅が日本で起きている

生物多様性国家戦略について、オオカミ復活すべし、と言う立場から記事を掲載しましたが、この国家戦略の、日本の自然の置かれた状態についての認識が、間違っているのではないか、という指摘を書いておきたいと思います。

環境省は、生物多様性の危機について、その原因を下記のように認識しています。

            

http://www.biodic.go.jp/biodiversity/wakaru/about/biodiv_crisis.html


開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少(第一の危機)
              

里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下(第二の危機)
              

外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱(第三の危機)
                      


シカ等の野生動物が増えていることは、第二の危機で触れていますが、はっきりと原因を指摘するのではなく、単に「個体数増加が生物多様性に大きな影響を与えている」とするだけです。

NPO意見交換会に出席された環境省の担当の方には、「第一の危機でもなく、第二の危機でもない」危機なのだということはプレゼンさせていただきましたが、このような環境省の原因分析では、本当の日本の自然の中で何がおきているのか、を理解することができません。

この国家戦略のために聴取された識者委員の方たちの頭脳の中には、これを理解するカギがないように見えます。そうでなければまだ確信がもてずに発言を控えられているのではないでしょうか。

このカギは、アメリカでの議論にあるように思います。

たびたび引用しますが、「捕食者なき世界」(ウィリアム・ソウルゼンバーグ:著者は科学ジャーナリスト)は、このような問題について、アメリカ人の研究者が何を見つけ、アメリカでどのような議論がされてきたかを教えてくれます。

                

この章です。

第5章 生態系のメルトダウン

           

この章の主人公は、

ジョン・ターボー

1936年生まれ デューク大学、プリンストン大学教授(現在のことは不明です)

 

1990年ごろ既に、熱帯生態学の第一人者で、本書ではこう評されています。

「比類ない多様性を誇る熱帯雨林の生物に広く通じ、野外研究では一流の植物学者や鳥類学者、霊長類学者にひけをとらなかった。熱帯の生態系に関して、ターボーは例を見ないほど広い範囲にわたる重要な論文を発表していた。」

 

その生態学の第一人者が関心をもっていたのは、

「1988年に「世界を支配する大きな存在」という大胆なタイトルで発表した。彼が「大きな存在」の筆頭にあげたのは大型捕食動物だった。」

「もし私の考えているとおりなら、ジャガー、ピューマ、オウギワシといった熱帯雨林の頂点捕食者は、その生態系を安定させ、きわめて多様な動植物を維持する上で、中心的な働きをしているはずだ」」


              

その関心は以下のように公式に表明されました。


                  

1980年、生物多様性の危機に触発されて「保全生物学」という分野が生まれ、その誕生を正式に宣言する書籍『保全生物学』(マイケル・スーレ、ブルース・ウィルコックス編)が刊行された。ターボーは研究仲間のブレア・ウィンターとともに「絶滅の原因について」と題する章を担当した。ふたりは、絶滅には主に二つの種類、一次的絶滅と二次的絶滅があると論じた。一次的絶滅は、種が小さな個体群に分かれて危機的に孤立――すなわち断片化――することや、気候変動や重大な事故によって引き起こされる、それは人間が自然界のそこかしこに斧を打ち込み、大自然の最後の砦まで崩壊させた結果であり、生物多様性が蝕まれるプロセスがありありと見て取れる。

                       

しかし、
ターボーとウィンターの興味を引いたのは、二次的絶滅というもっとわかりにくく、思いがけない絶滅だった

「ロバート・ペインがマッカウ湾の潮間帯のヒトデを海に投げ捨てたところ、まもなくそこに棲んでいた生物種の半分が姿を消したことはよく知られるが、二次的絶滅の経過はそれによく似ている」とターボーとウィンターは書いている。「ここに、これまでほとんど誰も手をつけていなかった重要な研究分野がある。

              

頂点捕食者がいなくなると陸上の生態系にどのような影響が出るかについては、なにもわかっていないに等しい

そして章の後半で実例をもって、二次的絶滅は頂点捕食者がいなくなることを契機として、連鎖的に(カスケード)起きるという意味のことを書いています。

こうした影響もあって、イエローストンの再導入の議論も進展していったのです。


 

「捕食者なき世界」で取り上げられている、捕食者を失った生態系の事例は、今日本で起きていることそのままです。

環境省の言う【第一の危機】によっておきたのは、100年前の【頂点捕食者の絶滅】でした。それに加えて【第一の危機】の中にあるもう一つの現象、開発行為によるシカの餌場の拡大があり、【第二の危機】里山の放置でさらにエサを増やして、現在の状況があります。そしてシカの爆発的な増加は、カスケード的に二次的な絶滅を呼びこみます。

                         

シカがカモシカを高山から追いやり、減らしています。下層植生を食べつくし、その植物に依存して生きていた蝶や、鳥や、小動物がいなくなりました。土壌は乾燥し、土壌生物はいなくなります。シカは落ち葉まで食べつくし、落ち葉を分解して川を通じて海に送り込んでいた栄養素が断ち切られます。土砂が渓流に流れ込み、渓流魚がいなくなります。

これらは断片的に研究結果が出てきています。

日本では二次的絶滅に関する専門家の見解はほとんど紹介されていません。
          

岩波書店の「現代生物化学入門6 地球環境と保全生物学」(鷲谷いずみ、松田裕之ほか)に若干触れられていますが、十分にこの用語を解説し、日本の現状と結びつけて検討してはいませんでた」。

                   
まして、二次的絶滅の原因になる頂点捕食者の存在の意義については、触れてもいません。

 

頂点捕食者不在をどうするかについて、日本ではアメリカで行われた議論とはまったく異なる状況にあります。頂点捕食者がいなくなった影響について議論するのではなく、頂点捕食者を日本の自然に戻すことは、

「外来種の導入であり、生態系にどんな影響が出るかわからない」ため、議論することさえしない

「現状よりも悪くしないことが重要だ。だから予測のつかないことはやめるべきだ」

                       

というのが日本の研究者あるいは専門家の現在の態度のように見えます。環境省も今までは同じでした。議論の俎上にさえありません。

アメリカでは、頂点捕食者がいなくなると何が起きるかわかっていないが、頂点捕食者がいなくなった生態系では恐ろしいことがおきている、ということが議論の対象になっていました。

 

「これまでほとんど誰も手をつけていなかった重要な研究分野がある」と注意を喚起した研究者もいました。

 

日本で起きているのは、生態系の二次的絶滅そのものです。

 

ここに【日本では】ほとんどの研究者が手をつけていない重要な研究分野があるのに、誰も手をつけようとしていないかに見えます。

 

 

 

「捕食者なき世界」では、この章は、「緑が消える」というサブタイトルで終わります。

                     

 

「あなたの周囲をみてほしい」「乾燥したアメリカ西部の草原は家畜に荒らされて、トゲの多い低木に覆われつつある。マレーシアの森は、野性のブタのせいで消えつつある。そしてアメリカ東部の森は、オジロジカに食い尽くされようとしている」



                     

日本もそうならないために、かつて日本にいた【オオカミ】という頂点捕食者の存在を見直す必要があります。

                                     
                                

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