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2012年9月 9日 (日)

「よみがえれ 知床   100平方メートル運動の夢」を読み返す~オオカミ復活のシナリオ

2010年3月、オオカミ復活のメルクマールの一つとなるような本が出版されました。


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「よみがえれ 知床   100平方メートル運動の夢」辰濃和男編著 関根郁雄 深沢博


この本は、知床の自然保護の苦しい闘いの記録です。

森林伐採をやめさせるために木にしがみついて守った人たち、トラストの仕組みを考え出し、日本全国から支援を集めた人たちの長い苦闘の記録です。



知床の自然を守る闘いは、人間対人間、保護対開発の構図の中では、知床の人たちが勝ったといえます。国有林の伐採を進めようとする林野庁と、知床の自然の貴重さを知った保護派の人たちの対立の構図は、保護派の理が勝ち、全国からの支援を集め、草の根の力が、官庁の無味乾燥な論理を突き崩し、保護派の勝利に終わりました。


世界自然遺産への登録は、その成果です。


ところが、その裏では、別の闘いが始まっていました。



エゾシカの増加です。守ったはずの森林が、内部から崩壊するのを知った人たちは、同じ構図の中で植林した木を守ろうとしています。エゾシカの食害を防ぐために、樹木にネットを巻き始めたのです。ところが今度は、前回のように樹木を守ることはできません。



伐採業者と違い、24時間、どこにでも出没し、ほしいものを手に入れるまで決して諦めないエゾシカを防ぐことは不可能だからです。

            

この本の最後に、その知床の悩みが、100年後の知床半島を予想する形で記されています。

この終章が知床半島の“今の”現実です。



               

 

『よみがえれ 知床』目次

第一部 知床で夢を買いませんか

第一章 藤谷町長、「夢」を追う

第二章 運動の広がり

第三章 土地を買い取る

第四章 開拓地での生活

第五章 伐採問題が残したもの

第二部 知床で夢を育てませんか

第一章 森づくり憲法

第二章 支えあうトラスト団体

第三章 参加者との交流

第四章 世界自然遺産をめざす

終章 未来になにを残すか


 

 

第二部終章から引用します。


未来から見た知床の現在の姿を、感じてください。


                            



【ここから引用】

       

ここで紹介するシナリオは、知床財団理事長の関根郁雄と事務局長の山中正実が描いたものである。むろん架空の未来像ではあるが、長い間、知床100平方メートル運動にかかわってきた二人が、その体験をもとにして描いたものであることをお断りしておきたい。

何よりも大切なのは、エゾシカの問題だ。

*****

            

木々は枯れていった

                  

シカの数を人為的に減らす仕事は、すでに2007年からはじまっていた。その場所は知床岬のある地域だ。ここは、知床国立公園内最大のシカの越冬地になっている。

2010年代以降、シカの「個体数コントロール」は、知床国立公園内の4ヶ所の主要な越冬地で、100平方メートル運動の運動地である岩尾別地区のほか、ルシャ地区、相泊地区でも行われるようになった。

その結果、それぞれ2000年代初頭にくらべて三分の一から五分の一の水準まで数を減らすことができた。しかし、それ以上の抑制は困難だった。そして、この程度の削減では、残念ながら森の広葉樹の天然更新は復活せず、シカに樹皮を剥ぎ取れら他木々の枯死が続いた。

シカの頭数抑制のため、予算と労力がつぎこまれ、これが大きな財政負担となった。主要な越冬地のうち、年に二ヶ所ずつ抑制計画を実施するとしても、年間数千万円の費用が必要なのだ。しかも、シカの捕獲を休止すると、数年から十数年程度でその数が元に戻ってしまうことがわかってきた。

森の植生が自然に回復する状態になるまで、シカの数を抑えることはついにできなかった。四ヶ所以外は手をつけることさえできなかった。

********

            

2007年にはじまったシカの人為的削減の仕事は、目標の達成が困難であり、財政的な負担もかさむことなどの理由で、20年後の2027年、中止になった。

 

人間の側が「白旗」を上げざるをえなかった。

                

*******

                  

新しいシカ抑制策は?

やがて、本来の生物相の復元を図るためには、シカの捕食者として、オオカミの再導入が必要だという議論が俎上にあがることになり、その是非をめぐって、全道的な論議がまきおこった。                  

*************

オオカミは・・・・道東一円に分散してゆく恐れがある。そうなれば家畜への被害が発生し、人身被害も出てくると心配する声がでてきた。

一方では、世論の変化もあった。人身被害の懸念は誤解であることが認識されるようになってきた。人間がゆがめてしまった生態系を元に戻すために、北海道の本来の動物相を取り戻す必要性を求める人たち、つまりオオカミの再導入を求める人たちが増えてきたのだ。

*******

                     

2030年、環境省は、知床世界遺産地域の生態系を本来の姿に戻し、シカ問題を解決するため、オオカミの再導入を選択肢の一つとして検討することを決断した。

(公聴会がいくどとなく繰り返され)

2045年、ついに知床岬に1パック、ルシャ地区に1パック、あわせて15頭のオオカミが放たれた。

*****

               

【引用終了】

そして2060年代後半には、シカの密度が80年代初頭レベルまで低下し、防鹿柵の撤去が始まり、2110年には森の衰退が止まった、というシナリオです。

このシナリオでは、環境省は2027年に人為によるシカの個体数調整を諦め、白旗を上げます。

現在から15年後です。

今、現実の森林の姿を見回して、15年の歳月がどれほど重いものか、わかっていただけるでしょうか。
シカの急激な増加が始まった森では、10年どころか数年で、あっという間に姿を変えます。その変化のスピードは年々加速しているようにも感じられます。

植物が食べつくされ、植物に依存してきた生き物が姿を消して、「鳥も鳴かない山」に成り果てるのに、たいした時間はかかりません。


                           

15年も待つわけにはいきません。

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コメント

オオカミ導入の検討が始まるまでに15年を要したというのは、
現在の保護管理政策の推進者たちがいなくなってから検討が
始まったと言っているのでしょうか。
全く主体性のない情けないおとぎ話だと思います。

知床をはじめ日本中の自然がボロボロになってから、
(すでにボロボロですが)
「実はあの時から私たちもオオカミ導入について理解
していたのだ。」と、言っても仕方がないことです。
そんなアリバイ作りをしないで、少しの勇気を持って、
今はっきりと大きな声を出してもらいたい。

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