無料ブログはココログ
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック

« ドイツのオオカミ保護活動~ドイツWWFのエコツアー | トップページ | オオカミの生態~捕食能力、咬む力、食べる量 »

2012年11月 4日 (日)

なぜオオカミの復活なんですか?イヌじゃだめなんですか?②

イヌはオオカミの代わりができるか

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/34145589.html


オオカミ再導入がだめで、イヌを代わりに使うことができると考える人たちにも、考え方の違いがあるらしいのがわかってきました。

1.オオカミの代わりにイヌを山に放てばいい

2.イヌを訓練して、鹿だけを殺すようにし、人間がコントロールする

まだ類型はあるかもしれませんが、おおまかにいってこの2つのようです。

まず1.オオカミの代わりにイヌを自然に放つことについては、

前の記事にも書きましたが、

①イヌは野生動物ではなく、人間が作り出したものなので、元々の生態系にはいないものです

②イヌに頂点捕食者の役割を果たす能力はありません

③野生化したイヌは人を恐れず攻撃する可能性があるため却って危険です

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

①に関しては説明するまでもありません。

②に関する論拠は、上のブログの記述にありますが、イヌは雑食性がより強いため、必ずしもシカ等の有蹄類に依存しないし、有蹄類を減らさないということです。

 

また、はっきりしたナワバリを持たず、行動圏も小さく、必ずしも血縁でないグループを形成します。はっきりしたナワバリをもたない、血縁でないグループは繁殖の成功率が低く、その群れの継続性がありません。

そのためシカの頭数への影響は小さいようです。

 



また野犬が危険ということの根拠は、たとえば北海道でオオカミが絶滅した原因である開拓使による害獣駆除の記録を参考に考えることができます。その記録によれば、1878年から1881年の4年間に、駆除されたオオカミの558頭に対して、野犬の駆除は3342頭と6倍に上ります。これが意味するものが、野犬全体の頭数がオオカミよりも多かったのか、野犬のほうが、より人間の近くに寄ってきていたのか、ということは不明ですが、必ずしもオオカミよりもイヌが安全だとは言えないことの根拠にはなるだろうと思います。

また、ヨーロッパの現代の記録を見ても、ドイツのオオカミ保護活動団体NABUの調査によれば、ドイツにオオカミが定着して以降の家畜被害記録の中には、イヌが、守るべきはずの羊を捕食している例があります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2.は、人間のコントロール下でイヌを放ち、シカの頭数を調節することをさしているようですが、こういった主張をされている方が、どこまで現実的に考えているのかは、不明です。

まずこれを検討する要素を抜き出してみると、こうなります。

・イヌがシカ捕食、ないし殺傷能力をどれほどもっているか

・人間のコントロール下で人間の思うように(指示どおりに)働くか

・シカの殺傷に適した犬種があるか

・シカの頭数を調節するには、何頭のイヌが必要か

・そのイヌを育成するのに何年かかるか

・イヌをコントロールするのは誰か

比較のためにオオカミの事例を引き合いに出すこともありますが、以下のように検討してみました。

====================

まず、イヌがシカの殺傷能力をどれほどもっているか、については、第一の点で指摘したように、ノイヌがシカを食べている形跡が見つかった日光の事例がありますから、殺傷能力はあります。

問題は、シカの頭数に影響があるほどの能力か、ということです。

シカを捕食するのか、ただ殺すだけなのか、どう訓練するつもりなのかその方たちの考えはわかりません。

イヌは人間に作られた動物なので、雑食であり、肉食のオオカミと比べてアゴの力は半分になります。捕食することが前提であれば、それはオオカミに比べて弱点でしょう。そして行動範囲はオオカミに比べて狭いことが指摘されています。

オオカミの場合は、テリトリーの範囲内を1日40kほども歩いて見回り、エサを探しています。欧米のオオカミの研究から、1パックあたりのシカへの影響力のある面積はざっと2万haくらいの計算はできそうですが、イヌの場合、放すのではなく、人間のコントロール下ということであれば、1日どのくらいになるでしょう。人間の歩く範囲プラスアルファでは、比較にもなりません。また、イヌの出動日数も人間しだいということであれば、オオカミの「毎日出動」とは比較になりません。

人間の手から放して、イヌ自身に毎日活動させるのでは、さらに野犬化の危険があります。イヌはエサを与えてくれる人が主人なのですから、エサを自分で獲り始めたときに、人間の管理下を脱する可能性があります。

そのような行動を人間の指示どおりに行うかどうか、については、どうでしょうか。材料はありませんので、想像ですが、難しいのではないでしょうか。シカを捕食して、また飼い主のところに定期的に戻るイヌはいるでしょうか。

********************

次にそのようなシカの殺傷または捕食行動に適した犬種があるか、ということですが、一部の日本犬は適しているかもしれません。山梨県側の南アルプスの麓で、紀州犬が放れて勝手にシカを獲って暮らしていたという話を聞いたことがありますが、そのような日本犬は可能性があるかもしれません。ただし、シカを減らすことができたかどうかについては確認できません。またその紀州犬に対しては、保健所が出動してしまったようです。

さてその中型より大きな日本犬は、人間に対して危険はないのでしょうか。山道を歩く人間誰もに従順でしょうか。登山道で野犬に遭遇した経験がある身としては、怖いですね。人間を恐れず吠え掛かってきます。

また、飼い犬でも友人の家で飼っていた川上犬には、飼い主以外近づけませんでした。飼い主には従順でも、他人には攻撃的です。人間全般を飼い主とみなすかどうか、ですが、ありえないでしょう。

さらにそこもクリアしたとして、中型以上の日本犬を何頭揃えて、訓練すれば、シカの頭数調整に効果があるでしょう。それには当然飼育者、訓練者も足りるかどうか、という観点も必要です。上記のように飼い主に従順に指示に従うよう訓練する必要があるからです。

これは私には見当がつきません。

オオカミについて何頭必要かの予測は可能です。パックの頭数とテリトリーの面積を他の地域での事例から推測し、シカとの関係はイエローストーンの調査結果から類推すればいいのですから。



またそのイヌを、指示どおりに動くよう訓練するとして、必要な頭数を揃えるのに、何年かかるでしょうか。これも私には見当がつきません。



オオカミについての頭数増加の予測は可能です。ドイツのラウジッツでは、2000年に1ペアが定着してから、10年で10いくつかのパックに増え、さらに外部からの進入も加えて約70頭になりました。

イエローストーンでは31頭のオオカミが10年程度で一時は200頭くらいに増え、次にエルクの減少に伴って、減少し、現在は90頭程度に収まっています。

どうやって増えていくかのシミュレーションもラウジッツ、イエローストーン、ミネソタ等五大湖地方の例から推測可能です。

********************

その育成から実施までの期間がどの程度か、ということは非常に重要です。シカの増加は何もプレッシャーがなければ年に20%増えるといわれています。管理捕獲や狩猟によって何万頭も獲られていても、増え続けています。

イヌの増加とイヌによるシカの頭数調整は、算術的にペースが計算できます。人がイヌを使うのであれば、密度効果やリスク効果は期待できませんから、単純に捕食ないし捕殺の算術だけの効果になりますが、そのペースがシカ増加率を抑えるほどにならなければ頭数調整には貢献できません。ましてモンキードッグのような追い払いしかできないようなら、何も意味はありません。

狩猟者数に関して、現在10万人程度のところを、最低でも倍、20万人にしなければシカの頭数調整には間に合わないと考えていますが、イヌをヒトの代役と考えるなら、その20万人の狩猟者の何割かを分担するくらいの頭数が必要になります。それが何頭なのかはわかりません。単なる推測ですが、北海道も含めシカの頭数を200万頭と置けば、イヌが数万頭は必要ではないでしょうか。

この場合のイヌは、ヒトに従うイヌですから、オオカミのように頭数調節にリスク効果や密度効果、恐怖効果は期待できませんから、単純に個体数調整の目標値に対して必要な頭数を計算することができます。

するとその頭数を準備するのにかかる期間はどの程度でしょうか。10年かかっていれば、シカの頭数はおそらく今の4倍になっています。

また、オオカミの場合には、シカの頭数が減れば、オオカミの頭数も減っていくことがいろいろな地域で調査結果として得られていますから、人間が間引きする必要もありませんが、イヌの場合は、シカの頭数が減って駆除、管理捕獲の必要がなくなれば、イヌも必要なくなります。そしてイヌが自然減することはありませんから、シカを捕食ないし捕殺する能力を持ったイヌを寿命まで飼育し続けなければなりません。

数万頭の狩猟犬を訓練するのに、訓練者はどのくらい必要でしょうか。訓練ノウハウはあるのでしょうか。訓練場所はあるでしょうか。費用はどのくらい必要でしょうか。疑問だらけです。

現在と同様の猟犬の育成とは違います。シカを仕留めるために、オオカミの代わりになるイヌの育成です。

日本犬はいまや希少種ですから、母数がたいへん小さくなっています。それをふやしていくには時間がかかります。洋犬で適する犬種もあるでしょうから、その頭数を把握する必要がありますが、外国からの輸入にしろ育成にしろ、1頭に数年はかかるのではないでしょうか。一人の訓練者が一度に何頭の調教をすることが可能かわかりませんが、促成というわけにはいきません。


上記のような点で、二つの方法のどちらにしても、イヌをシカの頭数調整に使うことは無理があると考えます。

ちなみに、現在の狩猟法では、イヌによる止めさし(動物を絶命させること)は禁じられています。

動物を絶命させることを憶えたイヌが猟犬として使われることが危険だという判断なのかどうかは、不明ですが。



« ドイツのオオカミ保護活動~ドイツWWFのエコツアー | トップページ | オオカミの生態~捕食能力、咬む力、食べる量 »

オオカミ復活」カテゴリの記事

コメント

イタリアの著名なオオカミ学者ルイージ・ボイターニ氏の話によれば、人里から離れた野生下でのイヌは非常に死亡率が高いそうです。

理由の一つが餌を捕れずに餓死すること。人里であれば残飯や家畜の死体、あるいは生きた家畜等、イヌでも捕れる餌がありますが、それらの無い奥山や山岳地帯では、自力で野生動物を捕るしかありません。捕食者に対抗する能力が低い島嶼の小動物(アマミノクロウサギ等)ならイヌでも捕れるでしょうが、シカやイノシシ等、オオカミの捕食圧の下で進化してきた大型獣は、オオカミほど群れの連携が出来ず、咬む力も低いイヌではそうそう捕まらないのでしょう。そもそもオオカミですら若い個体は群れによるハンティングの中で狩りの技術を学んでいくのに、いきなり外に放り出されたイヌに大型獣の狩りは荷が重すぎに思われます。北海道や日光等では野犬によるシカの捕食が確認されているようですが、これらはおそらく遺棄された猟犬出身の個体による仕業なのではないかと思います。

第2の理由に、イヌは出産率が高い(オオカミが年1回に対し、イヌは年2回発情)にも関わらず、子育ては母親しか行わなず、群れのメンバーは子に餌を与えないことから、子イヌが成長出来る確率は非常に低いこと(オオカミはパックが子育てに協力し、若い個体を教育する)。日本の奥山や山岳地帯でイヌを放っても、定着出来る可能性は低いと思われます。にも関わらず国内で野犬が消えないのは、絶えず人間が新しく捨てていることが原因のようです。

これらの点から見ても、やはりイヌにオオカミの代わりは到底務まりそうにありませんね。

ショウさん
このコメントにも感謝します。
コメント欄に埋もれさせるのは惜しいので、本文にそのまま昇格させてもらってもいいでしょうか。
「ショウさんより」
として載せたいのですが。

ookuchi_makami様

本文に昇格する件について了承いたしました、私は構いません。知識を広めるお役に立てれば幸いです。私が参考にさせて頂いたHPは以下の通りです(ルイージ博士のインタビュー、hは抜いてます)。翻訳文なので元の原文があるはずですが、残念ながら発見出来ておりません。

ttp://homepage2.nifty.com/~wolf/wolf/italy.html

なお、アマミノクロウサギ云々は私の知識に基づくものなので、ルイージ氏の言葉ではありませんが、的外れではないと思います。

ショウさん
どうもありがとうございます。
では、さっそく、そうさせていただきます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/221774/56040908

この記事へのトラックバック一覧です: なぜオオカミの復活なんですか?イヌじゃだめなんですか?②:

« ドイツのオオカミ保護活動~ドイツWWFのエコツアー | トップページ | オオカミの生態~捕食能力、咬む力、食べる量 »