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2012年11月24日 (土)

「キーストーン種」って何?

オオカミのような捕食者を表現する言葉がいくつかあります。

大型肉食獣、捕食者、頂点捕食者、キーストーン種、キーストーン捕食者

その中で、一般人にわかりにくいのが「キーストーン種」という用語です。

キーストーンという言葉そのものは、建築用語から取られたものであり、アーチを構成する重要な要石になるものを指します。建築用語としても、日本人には意外に理解しにくいものではあります。まずアーチを想像することがありませんし、日本にも要石という言葉が(建築ではない分野で)あるからです。

アーチ構造におけるキーストーンとは、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%81%E6%A7%8B%E9%80%A0%E5%9B%B3.png

この小さな、最後に打ち込み全体を安定させる楔石のことを言います。

これを生態学に転用し、「少数でありながら、全体を支える役割をもつ種」としてキーストーンという使い方をしました。

日本でいう「要石」のイメージは、これでしょうね。

Kanameisi

地震を起こす大鯰を抑える、「地上部分はほんの一部で、地中深くまで伸び、地中で暴れて地震を起こす大鯰あるいは竜を押さえているという。」(wiki)

ここで少しイメージにずれがあります。日本の要石は、大きな石のようです。


生態学事典では、「キーストーン種」についてこう書かれています。

キーストンとは、ギリシャローマ時代以来のヨーロッパのアーチ建築に見られるごとく、アーチの最上部に据える楔形をした要石のことであり、これががないとアーチは不安定になり崩れてしまう。転じて、生態系における食物網の最上部に位置し、他の種の存在に大きな影響力をもつ種を「キーストン種」とよんだのが(Paine、1969)、生態系におけるこの語の使われはじめである。アメリカ西海岸の岩礁潮間帯において、上位捕食者であるヒトデは、岩礁表在生物のうち競争優位種である二枚貝のイガイ類を好んで食べることにより、後者による空間資源の占有を阻み、結果としてフジツボ、カサガイ類などの競争劣位種の存在を助け、系全体の総種類数を高いレベルに維持する。逆にこの系からヒトデが除かれると、イガイ類による競争的排除が進み、劣位種の個体数が激減したり、系から完全に失われることになる。キーストン種の概念は、もともとこのような「影響力あるいは波及効果の大きい上位捕食者」に適用されてきたわけで、食物網の「上からの制御(トップダウンコントロール)概念、あるいは栄養カスケード概念との結びつきが強い。しかしながら、1980年代から90年代にかけてキーストン種という語は肉食性捕食者だけでなく、植食者・被食者・共生・寄生者なども含めて、群集を構成する他の種の存在に大きな影響を与え、種組成・体サイズ分布・エネルギーの流れなど、群集の特徴を決めるのに顕著な役割を果たしている生物一般に使われるようになり(Menge et al.,1994)、今日に至っている。すなわち、キーストン種であるかないかは、食物網内の位置にかかわらず、系内の他の種に与える影響の程度により決まるとされる。これに伴い、捕食者がキーストン的な役目を勤めている場合には、キーストン捕食者とよび、広義のキーストン種とは区別されることも多い。

(生態学事典)


発行は2003年、編集は日本生態学会 巌佐 庸、菊沢喜八郎、松本忠夫。


最初の「キーストーン」という建築用語から、事典に書かれているような変遷があることはわかりますが、「キーストーン」の小さな楔石というイメージを払拭しないと、理解できないことも多くなってきます。

シカのように圧倒的に数が増えて景観を変えてしまう種も「キーストーン」と呼ばれることがあるからです。

さらに最近になり、鷲谷いずみ「生態系を甦らせる」(2001年)を読み返していて、またまた戸惑うことになりました。


第三章[進化する生態系」で著者は、自然淘汰による適応進化、自然淘汰、という小項目でダーウィンの進化論までの流れを解説してきて、次に「生命の網の目を意識する」という項目で、「種の起源」には生態学のいくつもの分野のさきがけをなしていて、様々な分野はダーウィンから始まったと解説し、生物間相互作用の例として次のように書いています。


「(ダーウィンは)ある一種が侵入したため、群集全体が変わってしまった例について詳しく記述している。例えばダーウィンが紹介しているのは、彼の親戚が所有しているヒース草原の例である。その親戚が何エーカーかにわたってマツ科の常緑高木であるトウヒを植林したところ、まず貧栄養だったヒース草原の植生が大きく変わってしまい、ついで昆虫相が変わり、そこに棲む鳥の種類までが増えたというのである。今ではそうした種を「キーストーン種」と呼び、保全とのかかわりで注目している、その種の侵入や喪失が生物群集の性質を大きく変えてしまうような「要」ともいえる種のことである。ダーウィンは「キーストーン種」という言葉こそつかわなかったものの、そのような種が存在することを明確に意識していたようなのである。」


生態学事典の「キーストーン種」説明の流れを追うと、こうなります。

生態系における食物網の最上部に位置し、他の種の存在に大きな影響力をもつ種を「キーストン種」とよんだ(Paine、1969)

②キーストン種の概念は、もともと「影響力あるいは波及効果の大きい上位捕食者」に適用されてきたわけで、食物網の「上からの制御(トップダウンコントロール)概念、あるいは栄養カスケード概念との結びつきが強い

③1980年代から90年代にかけてキーストン種という語は肉食性捕食者だけでなく、植食者・被食者・共生・寄生者なども含めて、群集を構成する他の種の存在に大きな影響を与え、種組成・体サイズ分布・エネルギーの流れなど、群集の特徴を決めるのに顕著な役割を果たしている生物一般に使われるようになり(Menge et al.,1994)

④キーストン種であるかないかは、食物網内の位置にかかわらず、系内の他の種に与える影響の程度により決まるとされる。


ここまでは動物の食物網内の役割を現す用語として使われてきたようなのですが、鷲谷さんは、これを植物(トウヒ)まで定義を拡張したように見えます。

これは学会のどこかで合意があったのでしょうか。一般向けの図書に書かれるのであれば、当然動物と植物の違い、食物網とかかわりなく適用するという合意や議論があったと見るべきだと思うのですが。それとも生態学の世界では、このようなジャンプは当然のようにあることなのでしょうか。

それともこの言葉自体がいまだにそれほどあいまいなままなのでしょうか?

私のこの疑問は正当でしょうか。それともこのような疑問を持つこと自体間違っていますか?


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