無料ブログはココログ
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック

« ドイツでオオカミは家畜を襲ったか?~ラウジッツの食性調査 | トップページ | イヌとオオカミの違い~消化能力に関して »

2013年1月30日 (水)

イヌとオオカミは違うってば!~動物行動学からの解答

イヌとオオカミは違うったら違うってば~その理由解説します。

 

 

科学系のニュースサイト「サイエンス・デイリー」に「なぜオオカミは永遠に野生動物で、イヌは飼い馴らすことができるのか」という表題の記事が出た(2013年1月17日)。

原文はこちら。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130117152012.htm#.UPlzbd6Vl9U.twitter

イヌとオオカミは遺伝子的にはきわめて似ている。なのになぜ、オオカミは獰猛な野性を失わず、一方イヌは喜んで《人類の最良の友》となるのか。マサチューセッツ・アマースト大学の進化生物学者カスリン・ロードの博士論文は、この異なる行動が初期の感覚的経験と社会化の時期に関係していることを示した。(詳細は「エソロジー」の最新刊に掲載されている。)

 この論文の一番のポイントは「遺伝子的に似通っているだけに、イヌとオオカミが発達初期の段階ですでにこれほど違うとは、きわめて驚くべきことだ。」という部分。

 イヌもオオカミも平均して、嗅覚が発達するのは生後2週目、聴覚は4週目、そして視覚は6週目で、同じだった。違うのは、四肢の動きをうまく調整して歩き始めることと、周囲を「こわいもの知らずに」探索する行動が、いつ開始されるか、ということだった。オオカミは生後2週目からこれを始めたのに対し、イヌは生後4週目からだった。 

 「こわいもの知らずの探索」とは「社会化の窓が開く」とも表現される。「社会化」とは心理学用語では「その社会への新参者が、文化・価値基準と行動規範を身につけること」、わかりやすく言えば「自分は誰と、どんな世界で生きていくかを知ること」である。この「社会化の窓」が開いている時期にはコドモ動物は怖れを感じることなく歩きまわり、探索することを始める。ここで接触したものについては生涯を通して親しみを保持する。この段階で引き合わせられれば、イヌは、人や馬、ネコにさえもなつき、終生それらと共に居心地よく暮らせる。しかしこの時期が過ぎ去ると恐れが芽生え、「窓」が閉じた後は、新しいものを見たり聞いたり嗅いだりすることは恐れの反応を引き起こす。

 これまで、オオカミの仔の感覚発達についてはほとんど知られておらず、仮説は、イヌの仔についての既知のことに基づいて推定されるのがふつうだった。しかしロードはこの研究で、オオカミの仔がイヌと違って、まだ目も見えず聴覚も発達していない2週目から歩き始めて周囲の探索行動を始めることを初めて報告した。

 加えて「仔オオカミが最初に音を認識し始めると、彼らは新しい音刺激に恐怖を示す。そして眼が見えるようになると、視覚という新しい刺激に対しても、まずはこわがることから始まる。それぞれの感覚に結びついて仔オオカミは周囲を新しい感覚のショックとして経験する」とも述べた。つまり、生後4週目にはオオカミの「社会化の窓」は閉じてしまうのである。

一方、仔イヌは、嗅覚、聴覚、視覚の3感がそろって機能し始めてからようやく歩行や探索行動を始める。そのため、もしイヌを人間または馬に馴れさせたいと思ったら生後4~8週目のあいだ、つまりこの「社会化の窓」が空いている時期に、90分間だけいっしょにいさせるだけでよい。イヌは嗅覚、聴覚、視覚の3感をフルに使って相手を探索し、その後では、引き合わせた何者に対しても、イヌは怖れをしめすことはなくなる。もちろん真の信頼関係を構築するにはもっと時間はかかる。しかし、オオカミの場合、イヌと同程度の状態に近づけるためには、生後3週目になる前から24時間一緒にいる必要があり、そうしてもなお、イヌと同じレベルの愛着や、こわがられることなしに関係を築くことは難しい。


 生後1ヶ月間という、生涯のうちで最も大切な時期に周囲をどう経験するか、その違いが、後の発達や、異種間とりわけ人間との社会的愛着行動を形づくる能力に関して、かれらを明らかに異なる成長軌道へと向かわせる。「遺伝子のレベルでみると、違いは遺伝子そのものでなく、それが発現する時に生じるのかもしれない」とロードは言う。

 これをオオカミの幼獣の立場から再考してみよう。

「社会化の窓」が開いている時、つまり仔オオカミが自発的に周囲を知ろうと動き始める時、頼りになるのは嗅覚だけ。その時に「これが自分の生きる世界だ」と知り、居心地よく思う、その対象は巣穴の中にいる母オオカミの匂いと、せいぜい、彼女に濃厚に接触する同じパックのオオカミたち、ということになる。

そして、耳が聞こえ目が見えるようになる時期には「社会化の窓」は閉じてしまう。聞くもの、見るものが、仔オオカミの警戒心をかきたてる。安心できるのは嗅ぎ慣れた匂いの、群れの仲間だけ。

きわめて厳格なナワバリ性動物であるオオカミにとっては、家族以外のオオカミは命に関わる危険な存在だ。たとえ同じように遠吠えをし、同じ姿をしているからといって、ホイホイなついていってしまっては命は無い。社会化の窓が早期に閉じてしまう、ということは、オオカミが生きていくのには適応的な性質なのだ。

 まして異種動物であるヒトに慣れ、なつくのは、オオカミにとっては我々が考える以上にハードルが高いことなのかもしれない。

 

オオカミの再導入と聞くと「日本は人口密度が高くて、しかも山奥まで人家があるから、オオカミを日本に入れたらすぐ人に慣れてしまう」と心配する人がいる。しかし、このロードの論文から、その回避のヒントが得られるだろう。オオカミの「社会化の窓」が開いている時期に、人の匂いに濃厚に接触する機会をつくらないようにする、それだけで次世代オオカミの「人への警戒心」を、より容易に維持することができると思われる。

 

(文責:ミソサザイ)

 

« ドイツでオオカミは家畜を襲ったか?~ラウジッツの食性調査 | トップページ | イヌとオオカミの違い~消化能力に関して »

オオカミの生態」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/221774/56662997

この記事へのトラックバック一覧です: イヌとオオカミは違うってば!~動物行動学からの解答:

« ドイツでオオカミは家畜を襲ったか?~ラウジッツの食性調査 | トップページ | イヌとオオカミの違い~消化能力に関して »