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2013年1月 3日 (木)

狩猟振興策でシカ抑制ができるか?~無理だと思います

 狩猟者を増やそうという努力が官民で始まっている。

目的は、狩猟人口をこれ以上減らさないことにある。これ以上減っては、鳥獣保護管理の目標が達成できないからである。

(狩猟者登録数の変遷グラフ)

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 このグラフも古くなって、最後の棒が2000年である。その後の経過も含めて新しい図表が作られないものだろうか。最後の棒が示す登録数は約20万人であるが、2~3年前に猟友会の会員が10万人を切ったというニュースがあり、登録数も時間の問題と見ていたが、登録数もそろそろ10万人を割り込んでいい頃だと思っている。

 昨年はいろいろな機関から狩猟の魅力を発信する試みが発信されていた。

●狩猟の魅力まるわかりフォーラム(環境省)

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15844http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15844

 




 こうした呼びかけだけでなく、他各自治体や都道府県の捕獲手当ての増額や猟期、狩猟種等の規制緩和によって、狩猟の意欲を高めようという試みも多くなった。

ジビエ振興策というのもその一環であり、ジビエによる狩猟者の収入増があれば、狩猟意欲も湧くだろうとの狙いである。

 このような努力は敬服に値する。必要なことであることには同意する。オオカミ再導入のためにも、欠かせないことであるのは確かなことである。

しかし、、現場対応のミクロの対策としては正しいが、マクロの、日本全国でのシカ頭数抑制対策(政策というべきかもしれないが)として、これが唯一の方法であるというのは間違っていると考える。狩猟だけでは、今の状態を改善することはできないからである。

 そう考える理由を以下に述べようと思う。


まず趣味の狩猟者がいくら増えてもシカの頭数を減らすことにはつながらない。


・技術が伴わない。狩猟者として一人前になるために必要な時間は、頻繁に出猟する人でも
10年は必要ではないだろうか。都市在住の趣味のハンターが年に何回出猟できるのだろうか。やはり猟友会主体の管理捕獲に参加してもらうほかないが、趣味の域を超える負荷を覚悟する人はどの程度いるのだろうか。


・趣味のハンターはノマドハンターと呼ばれることがある。ノマドは遊牧民のことである。遊牧民は家畜のエサを求めて草の多いところを選んで移動を続ける。ノマドハンターは、シカ密度が低くなれば、成功率が低くなり、獲物の多い猟場へ移動してしまうから、シカの密度を減らすことにはつながらないのだ。技術がなければなおさらなのだ。

 その事例は、世界各地にある。ドイツでは、34万人のハンターがいて、130万頭ものシカ類を狩猟しているが、山間地では、森林の食害がなくならない。狩猟者団体の代表は、「人数は問題ではない」と言っている。

 アメリカにも全米で80万人のハンターがいるらしいが、各地の森林でのひどいシカの食害が「捕食者なき世界」に紹介されている。

 本当に狩猟者を養成してシカを減らす意思があるなら、本格的な猟師養成プランが必要である。ドイツには、そうした養成機関がある。2~3年の養成期間で、年に30~40人ほどのハンターを養成し、なおかつ専門職としての収入を得られる職を用意しているのである。そのドイツの情報は、環境省職員も出席したあるシンポジウムに招聘された狩猟者団体の関係者が講演したということなので、環境省も知っているはずなのだが、その動きはないのだろうか。

 

 また、本気でシカの頭数管理を猟師の増員で成功させようとするなら、最低でも10~15万人程度の元気な若いハンターが必要であると考える。

 シカの増加が問題として研究者の目に入ってきたのは1980年代になってからである。それ以前の70年代に狩猟者登録数はピークにあった。約50万人の狩猟者が登録されていた。このうち大物猟に出猟していたのがどの程度の割合になるかは、不明であるが、現役ハンターに聞いた印象では、シカ、イノシシを対象とした猟を行う割合は2~3割だというから、多めにみて、3割15万人、平均年齢30代の猟師がシカ猟を行っていたと推測できる。その時期は、シカは増加の気配を見せなかった。その猟師が減り始めるとすぐにシカは増え始めている。


 15万人の40歳未満の猟師がアクティブに活躍する山野であれば、シカの頭数抑制も期待できるかもしれない。だからその程度に狩猟者養成数目標を置いてもいい。狩猟フォーラムとは、そのような目標値を置いての環境省の施策なのだろうか。



 でも、それ以前は、もっと少ない猟師だったじゃないか、という声も聞こえてきそうだが、それにも背景がある。

 終戦からの数年間、日本中を食糧不足が襲っていた。600万人の引揚者は生活の糧もなく、そのうちの推定100万人が全国各地の山間地に入植し、開拓部落を開いていった。昔の開拓部落という集落はどの地域でもあり、聞いたことがある人は多いと思う

森林を切り開いて作った農地では数年の間自家用できるものでさえ十分に栽培できるかどうかわからない。

 その結果、狩猟免許の必要性など感じない山間地の青壮年がたくさんいたから、野生動物は集落に現れればたちまち食糧にされてしまった。狩猟者を増やす必要があるのは、山間地、中山間地の住民としてなのだ。しかし、山間地集落は既に撤退が完了しそうなところまで来ている。

中山間地でようやく一部の集落が残っている程度である。狩猟の担い手はほとんどいない、食糧としての要請もない。


 中山間地に新規就農しようという若者に狩猟技術は必須である。そのような狩猟者が増えることは有効である、が、就農者は本業で覚えることも稼ぐことも山のようにあるのに、狩猟に駆り出されるのは迷惑なことではあろう。



 結局、狩猟圧は、山間地の人口と食欲、金銭欲しだいなのだ。明治日本の乱獲は金銭欲が高じたものだが、戦後の狩猟圧は、食欲に駆られたものだった。そのどちらかのインセンティブが働くなら、狩猟者の意欲も持続するかもしれないが、シカ1頭獲っても1万円2万円の収入(それも集団で)にしかならないのでは、意味がない。それも本州では1人で獲れるわけではないし、獲ってからの手間もたいへんなものだ。下界に肉を持って下りてきても、その肉がひっぱりだこになるくらいならまだしも、誰も食べてくれない、皮や角を現金化しようとしても、二束三文の単価では、意欲も湧きようがない。


 ジビエについてもう一言付け加えるなら、食肉の量の点で、頭数を抑制できるほどの消費を作ろうとするなら、現に流通している多量の牛肉や豚肉を価格の点で押しのけるものでなければならない。逆に猟師に金銭的なインセンティブを与えるためには、今の単価、手当てでも足りない。その二つは、両立はできないのである。

 このような点から、いま都市の住民の注意を喚起して、狩猟者を増やし、昔と同じように狩猟圧を上げるというのは、まったくもって無理というものであると考える。

 ここまで広がったシカの分布をカバーして、全体の密度を適度に下げることは、これから手を挙げる趣味の都市在住ハンターにはできない。

 本格的に養成した少数のプロの狩猟者が、シカの分布と人間領域の境界を守り、人間の手の及ばない領域ではオオカミ再導入によって生態系を修復し、バランスを回復する。趣味のハンターは密度が下がって、より難度が高くなった狩猟に挑む「ディアハンター」になる、というのが理想的な姿ではないだろうか。


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