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2013年9月 5日 (木)

「ネバー・クライ・ウルフ」の功罪

 

オオカミのイメージが悪かったのは、ヨーロッパもアメリカも同じだ。

 

アメリカではイエローストンへオオカミ再導入されるまでに、そのオオカミイメージがある程度よいものに転換した。

 

アメリカでオオカミのイメージを大きく変えた書物が、オオカミを追い続けて研究したアドルフ・ムーリーの「マッキンレー山のオオカミ」(1944)と、カナダ人小説家ファーレイ・モウワットの「ネバー・クライ・ウルフ」(1963)だ。

 

特に「ネバー・クライ・ウルフ」は、その後ディズニーが映画化するなど、オオカミのよいイメージを作り上げた功績は大きい。

 

モウワット自身と思われる主人公が、アラスカのオオカミを追いかけて、イヌイットの村に住み、なおかつオオカミの食べるものまで追体験してみせるというシーンは、強いイメージを残したらしい。

 

しかし、そのイメージが強すぎ、この作品が小説だということを忘れさせてしまう罪もあった。フィクションを本当のことと信じさせてしまうとは、小説家としては賞賛されるべきかもしれない。

 

 

「ネバー・クライ・ウルフ」のエピソードは、アドルフ・ムーリーの研究成果を脚色したものだった。

 

ハンク・フィッシャー(ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ)は、イエローストーンへのオオカミ再導入の経験を描いた「ウルフ・ウォーズ」で、「ネバー・クライ・ウルフ」について、こう書いた。

 

 

 

 ムーリーの科学的論文とモウワットの本は、クライマックスのシーンで著者がオオカミの巣穴に入り込むところまで、驚くほど似ている。モウワットはあれは自分の経験だというかもしれないが、彼の本のほとんどはムーリーからの借り物のようだ。彼が他の研究者に信用がないため、彼の本は、科学者からは酷評されることになった。その一つがピムロットだった。(ピムロット:カナダ人研究者、アルゴンキン公園でオオカミの研究に従事。カナダで尊敬を集める生態学者)

 

 

 ピムロットは、その本について「空想とファンタジーと他の研究者の成果」のブレンドだと形容した。モウワットの上手さと共感を呼ぶオオカミの描写は認めるけれどもといってこう結んだ。「もしこれが本当に事実に基づくフィクションとして発表されたなら、ネバー・クライ・ウルフをもっと楽しめただろう。しかし、その発表がノンフィクションとしてのものだったのは、たいへん残念なことだ。」

 

それにもかかわらず、この本はそれ以前の科学的な業績をあわせたよりも、一般市民のオオカミへの興味と関心をかきたてた。

 

 

 

 

この本の功績は、オオカミへの関心を高め、イメージをよい方向に引っ張った一方で、ファンタジーを事実と思い込ませてしまった。

 

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