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2015年8月 8日 (土)

IWMC2015 世界野生動物管理学術会議・見聞記 おまけ①

おまけ。

 終わって会場を見渡してみても、先ほど反オオカミの意見を述べたスズキ氏の姿は無し。途中で入ってきて、言いたいことだけ言って先に出ていったらしい。・・結局ああいう人って、知床や日本の自然のことを全体として (現状だけじゃなく理念やら将来像やら社会的な面も含めて)考えようとはしないんだよなー・・と思いながら、さてホテルに戻るかーと1階に降りるエスカレーターに乗っていたら、降りた先のフロアを横切っていくスズキ氏を発見!思わず呼び止めて話しかけてしまいました。もちろん日本語で!(^^;)

「あーさっきの質問ね。あれは司会者がダメだよ、喋ってたの誰か知らないけどさー(スズキ氏はマッカラー博士のことを知らないらしい)、好き勝手にベラベラベラベラ一方的に喋らせて。30分くらい一人で喋ってたぜ。 ああいう時は司会者が議論の方向性を示さなきゃいけないのに、何も言わないで聞いて、ハイ次。あれじゃだめだよな。議論になってなかった」

(・・・スズキ氏のこの反応からも、よほどマッカラー博士はオオカミ復活に有利な話をしてくれた、のかな?と思うのですが・・嗚呼、英語力の無さが返す返すも悔やまれる・・ダメもとでコッソリ録音すればよかった・・)

「イエローストーンでのオオカミ復活は俺もいいと思ったけど、カナダではオオカミはものすごく増えて駆除されてる。そういう現実を考えると、日本で、というのはさすがにねー(肯定はできないの意)。俺は科学者だから。」

(・・・なにそれイミフ。俺様基準?)


しかしここで議論をふっかけるほど私も子供じゃないです() せっかくの機会を逃す手はありません。ニッコリ礼儀正しく、カナダ在住だというスズキ氏からオオカミ情報をゲットする方向に話を変えました。

 前々からfacebook等で断片的に情報に触れて気になっていたカナダでのオオカミ駆除のこと。カナダでは、ウッドランドカリブー(シンリントナカイ)が減少しているので、その保護のためにオオカミを駆除している。「でもカリブー減少の原因は天然ガス開発のせいだとも聞いたのですが」と私。するとスズキ氏、やおらまじめな顔になって少し詳しく話してくれました・・というのも、翌日に彼はそのテーマで口頭発表をする予定だったのです!自分の発表内容に関することですから、関心をもって質問されるのは研究者としては嬉しいことですよね(笑)


かいつまんでいうと、シンリントナカイは未開の森林(成熟林)に適応した動物で、ガス田開発のために成熟林を切り開くと、林縁や草地が増えて、そういう場所を好むエルクやムースが進入してくることになる。そしてそれを追ってオオカミが来てしまい、増えてしまった。シンリントナカイが、増えたオオカミに捕食されるのは困るので、オオカミを駆除することになった、と。


・・・これって一見、因果関係がもっともらしく思える。でもよくよく考えると、ちょっとへんだな、と思いませんか。

 彼ら反オオカミ派は、オオカミは生態系に必須の動物とは認めず、邪魔な、余計な存在で、いない方がいろいろと都合が良いという発想から出発しています。だからオオカミがやってきたら困る、増えると困ったことが起こるから駆除する、という流れ以外にはないと思い込んでいる。

でも一方で彼らは、動物の生息数は利用可能な資源量に規定されるという「ボトムアップ理論」を信奉しています。オオカミは餌である有蹄類に依存して生きているだけであって、有蹄類の生息数を制御することはない、まして有蹄類の健全な存続や能力の発揮に貢献している・・などという発想はない。


・・・とすれば。彼らの信奉するボトムアップ理論からすれば、カリブーを追い詰めているのは、オオカミではない、はずです。カリブーを追い詰めているのは、成熟林を切り開いて彼らの好適な生息地を奪い、林縁を作り出したり草地にしたりしてしまった人間の開発であり、その恩恵にあずかって進入してきたエルクやムースとの「餌の競合」が、カリブーにとっては第一の脅威と考えられます。科学的な思考をするなら、そういう結論になるはず。


・・では、なぜその事例が、日本でのオオカミ復活に反対する根拠となるのでしょう?

 「俺は科学者だから」って、何?

 

 

 

本当はこういうふうに「そちらが信じるボトムアップ理論から言ったら、それはへんじゃないですか?」「もし仰るとおりなら、問題の焦点はそこではないですよね」・・って感じの議論を、感情的にならずにやりたいんですよね。そういう「科学的な事実を踏まえた理詰めの議論」をすることで、賛成反対お互いに見えてくるもの、学べることがある。マッカラー博士もそれを肯定するからこそ、あえてコメントでオオカミ問題を取り上げてくれたのかもしれません。でも日本は往々にして「議論になった」=よくなかった、という雰囲気があります。議論の場で主張をたたかわせ「今日はお互いに有意義だったな!HAHAHA!」という風土が日本人研究者の中にないのです。



スズキ氏がセッション会場で、オオカミの困る点として挙げた長距離を移動する個体のことについても、私たちはミッチ博士のシンポジウムで既に情報を得ています。オレゴン州から州境を越えて150年ぶりにカリフォルニアに戻った雄オオカミ「OR-7」 愛称ジャーニー。彼に対してカリフォルニアの州政府は何をしたでしょうか。州境にハンターを配置して追い払った?進入阻止のフェンスを作った?いいえ。600ページに及ぶオオカミ管理計画を作成しました。たった1頭のオオカミのために、それだけの用意をしたのです。


 要は人間の側に「オオカミと共存する意志」があるかどうか、関係者にやる気があるかどうかの問題なのです。オオカミがどんな動物であるかの問題ではない。

オオカミを論じることで、実はそのことがあぶりだされてしまうのです。だから反オオカミ派は「オオカミは危険だ、何か悪いことがあるに違いない」と言い立て、いかにもオオカミ復活が非現実的なアイディアのように演出をし、それ以上の議論をさせたがらないのです。余計な仕事はしたくない、というのが本音なのかもしれません。



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