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2018年9月 1日 (土)

「日本のシカ」第6章捕食者再導入をめぐる議論(梶光一)のミスリード④

 

梶光一氏の4つめのミスリードは知床問題です。これは、2002年までさかのぼります。

梶氏は、「日本のシカ」第6章の中の「知床国立公園におけるオオカミ再導入の議論」にこう書いています。

2001年に『しれとこ100平方キロメートル運動地森林再生専門委員会議の生物相復元ワーキンググループ』は、オオカミ再導入の検討を行い、オオカミによって、高密度のシカを減少させることは困難とし、オオカミ再導入は知床国立公園において生態的プロセスを復元することに正当性を求めるべきこと、狭い知床にオオカミをとどめておくことはできないため、オオカミの復元の実現には多くの人々がそれを望む時代の到来を待つ必要がある、との意見をとりまとめている」

 

 

001

 

さて、ここで私が疑問に思うのは、このブログで過去にも書きましたが、2002年発行の「しれとこ100平方キロメートル運動」機関誌「しれとこの森通信№5」には、「原始の再生に挑む」というタイトルで、当時の座長石城謙吉(いしがきけんきち)北大名誉教授のオオカミの復元に関するインタビューが掲載されているからです。彼はこう述べています。

「専門委員会議が全国に先駆けて生物相の復元を重要な課題としてとりあげ、その中でとくにカワウソやオオカミなどの復元を本格的に検討しているのは、食物連鎖の頂点にたつ食肉獣の復元こそは、原生的自然の再生という「しれとこ100平方メートル運動」の主旨にそうものと考えるからです」

Img079_2

 

石城座長は、2005年にも同様の主旨を知床博物館報告に、「しれとこ100平方メートル運動地森林再生専門委員会座長」の肩書きのまま書かれています。

 

100 平方メートル運動の森・トラスト」と絶滅種の復元

http://shiretoko-museum.mydns.jp/_media/shuppan/kempo/2605_ishigaki.pdf

 

 

 

 

要旨を抜粋すると、

「昭和521977)の「しれとこ100平方メートル運動」の呼びかけが全国的に大きな反響を呼んだのは,それが日本のナショナルトラスト運動のさきがけの一つだったためばかりではない.この運動が従来のナショナルトラストの常識を覆す内容のものだったためでもあった.一般のナショナルトラストが既存の自然や文化財を「保存」するための運動であるのに対して,100平方メートル運動は,失われた自然の「復元」を目指すものだったからである.」

 

「森林再生専門委員会は先にあげた三つの長期目標の2)に関わる不可欠のものとして,絶滅種の復元,すなわち現在は運動地内には見られなくなっているがかつては生息していたと考えられる生物種の復元を取り上げた.このことなくしては本当の意味での原生の自然の復元にはなりえないと考えたからである」

 

「哺乳類の復元の可能性を検討してきた.その第一の理由は,先にも述べたように,100平方メートル運動が旗揚げの時から揚げてきたテーマが,原生的自然の復元であることにある.オオカミとカワウソは,それぞれ森林と河川の生物群集の頂点に立つターミナルアニマルであり,これを欠いたままでは原生的自然を復元したことにはなり得ないからだ.“知床で夢を買いませんか”の呼びかけの,その大きな夢の一つとして我々は考えた.」

 

「オオカミ,カワウソの復元は100平方メートル運動の一存で行えるものではない.しかし,森林再生専門委員会は,自然復元への全国の多くの人々の夢を担う100平方メートル運動が,その趣旨に照らしてこの問題を社会に呼びかけるに相応しい立場と考え,その論議の足がかりとなる資料を集めてきた.そして,将来多くの社会的論議を経た後に,この運動地が日本における絶滅種復活運動の発祥地として,オオカミ,カワウソの北海道における復元の拠点になることを願っている.」

 

梶氏は「2001年から『しれとこ100平方キロメートル運動地森林再生専門委員会議の生物相復元ワーキンググループ』は、オオカミ再導入の検討を行い、オオカミによって、高密度のシカを減少させることは困難とし」と書かれていますが、2002年から2005年までの座長の見解は、上記のとおりです。

 

 

ついでにいうと

「オオカミ再導入は知床国立公園において生態的プロセスを復元することに正当性を求めるべきこと」とは2005年のシンポジウムのとりまとめで、梶氏がイエローストン側研究者の見解を整理したなかで使われていた言葉のように思いますが、それは石城座長の

「オオカミとカワウソは,それぞれ森林と河川の生物群集の頂点に立つターミナルアニマルであり,これを欠いたままでは原生的自然を復元したことにはなり得ないからだ.」

という説明にあるように、復元すべきだという見解で共通します。そしてそれは石城座長が、知床を全国の自然保護のモデルとして発信したいという長期的な、大きな希望を抱いていたということであり、復元には正当性があるという宣言でもあったわけです。

 

しかし、梶氏は、この議論をこうまとめました。

「狭い知床にオオカミをとどめておくことはできないため、オオカミの復元の実現には多くの人々がそれを望む時代の到来を待つ必要がある、との意見をとりまとめている」

 

これは、2006年になり、知床博物館報告にばたばたと掲載された3本の論説を背景に、問題を知床だけに閉じ込め、矮小化してしまった梶氏自身の見解であり、「多くの人々がそれを望む時代の到来を待つ必要がある」と、知床からは何も発信しないことを宣言しようというものでしょう。これが彼の持論であることは、この章の末尾にもそれが繰り返されていることからわかります。

 

とどのつまり、梶氏は、「しれとこ100平方メートル運動」の専門委員会議石城座長の2002年から2005年の表明をなかったことにして消去してしまったのです。

「生態的プロセスを復元することに正当性を求める」という、梶氏自身の考えとは正反対の文章を間に置くことで、言い訳を用意しながら。

 

梶氏自身は「オオカミ再導入に正当性がある」とは考えていないでしょう。なぜなら彼の発言や文章からは、野生は人間がすべて管理すべきもの、徹底して利用すべきものであり、人間社会の役に立たない動物は駆除、排除すべきと考えていることが透けて見えるからです。かつて梶氏は、知床関連の会議で、「もともと知床半島にはエゾシカがいた痕跡はないのだから、根絶してしまえばいい」と発言したこともあります。彼、およびその周辺の方たちが目指しているのは、野生動物のマネジメントではありません。

 

また前段でオオカミ再導入が困難という結論の裏付けとして引用されたのは、米田(2006)の知床博物館報告に掲載された論説です。これほど粗雑な、学術論文でさえない論を根拠にされているとは、お粗末です。

 

【反論】「知床に再導入したオオカミを管理できるか」(米田政明2006)に関する疑問

http://japan-wolf.org/content/2013/11/26/%E7%B1%B3%E7%94%B0%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%8F%8D%E8%AB%96/

 

おそらくこうして石城謙吉氏は2005年を最後に、座長を退かれることになりました。

 

伝え聞くところによれば、彼が知床を退くときに、彼の友人であるW先生に「官僚には辟易した」と漏らしたということです。私はそれを最初に聞いたときには環境省のことかと思っていましたが、こうして経緯を整理してみると、そうではなかったようです。

 

 

2002年知床はオオカミ再導入に傾いたことがある

http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2013/09/2002-4dfe.html

 

2002年知床はオオカミ再導入に傾いたことがある 

http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2013/09/2002-fc84.html

 

 

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