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2020年6月 6日 (土)

足立区のシカ騒動に思うこと~荒川、多摩川、利根川伝いにシカが東京進入か?

 

 

 今月初め下記のような騒動が報道されました。

荒川河川敷逃走のシカ捕獲…警察官ら約10人がかり、足立区危機管理部「早期に解決して良かった」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200604-06030364-sph-soci.view-000

(スポーツ報知)

「東京・足立区の荒川河川敷で3日、シカが捕獲された。午前9時ごろ堀切橋付近で目撃情報があり、警察官や区職員ら計30人以上が集結。同11時41分、草むらから姿を見せたところを、網を使って取り押さえた。」

 

その後、殺処分か引き取り手を探すか、という記事が続きました。

捕獲された「荒川のシカ」に殺処分の危機 東京都「ペットとしては飼えない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a66a8daa032ba34f8c2ecea530c0fa5bc9122e29?fbclid=IwAR1yO3lDwgCF_GanrrNtQayaIIzcvd0yJqvFhcqS236u1jEvambJhB_ABUA

 

捕獲の理由を足立区は

「地域住民の安全のため、シカの捕獲許可を申請し、都がそれを認めた。シカが河川敷から市街地に出れば、道路で車や人にぶつかるおそれがあったからだ。「シカは大きいし、動きが早いし、飛び跳ねるんです」(区の危機管理部)

とメディアに説明しています。

 

問題は荒川河川敷伝いに東京に侵入したであろうと想像できることです。

荒川上流にはシカの高密度生息地帯があり、関東山地の広域で頭数調整のため捕獲・駆除されています。そうした生息地から若いオスが単独で群れを離れ、新たな生息地を探しに出ることはよく見られる現象であり、たとえば岩手の五葉山あたりの群れから離れ、さらにどこかで増えて生息地を拡大し、八戸や秋田方面に移動する個体が目撃されたり、白神山地でカメラに写ったりしていることと同様の行動であると思われます。

今回の騒動だけでなく、関東の周縁部ではシカと鉄道の衝突事故も増え始めており、従来の生息地からはみ出して行動する個体が増加していることも推測できます。

東京圏の場合には、その移動がおそらく河川敷を通じて行われるであろうということも今回のケースから予想できます。

今後、多方面からシカが東京圏に向かうであろうということも類推できるところです。

そうだとすると、河川敷を伝って移動するということから見れば、下記の地図のように、上流部に高密度生息地を持っている多摩川、逆に利根川下流部にキョンが生息地を広げるであろう房総半島はこれから同様の現象が起きてもおかしくないだろうと思います。

Photo_20200606113201

 

 

 

さて今後、このような騒動が頻発したとします。関東圏都市部の自治体はどうするでしょうか。

私は「狼と森の研究所」フェイスブックで、シカは都市にはいられないのか?いられるサイズはどこまでなの?と反射的につぶやきましたが、上に挙げた3地点は比較として興味深いものになるかもしれません。

荒川、多摩川を伝って都心部に侵入する(であろう)シカに対して、都心の外縁を流れる利根川に出て、田園、地方都市へ北上する(であろう)小型のキョン。

どこまでが大型(といっても体重オス50 - 130キログラムくらいのシカとしては小さめですが)のニホンジカの生息を許容できるでしょうか。また小型の(体長47-70cm、体高45-50cm、体重12-17kg)キョンは都心に侵入したら今回のように捕獲騒動になるでしょうか。また今回捕獲されたシカをどう処分するのかについても環境倫理の面から興味深い課題です。

人々もしくはメディア、自治体の情報感度の面からもシカ問題の情報が大都市にどの程度浸透しているのかを少し測ることができました。自治体や今回報道したメディアには「上流部でシカが増えすぎ、困っている」情報を知っている人はいなかったように見えます。特にテレビのワイドショーがとんちんかんな解説をしていたと伝わってきました。シカの専門家に登場してもらいたいところです。

野生動物との共存が可能かどうか、は「共存」がどんな状態をイメージするかによります。それは十人十色です。そうしたこともこのような機会に議論されるべきではないでしょうか。

 

 

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