« 2020年12月 | トップページ | 2021年3月 »

2021年2月

2021年2月15日 (月)

里山と産業と村おこし~里山は二次産業の集積地?

里山とはという定義はあいまいですが、「農家が裏山を薪炭のため、肥料のために利用し、また自然が人間の耕す田畑によい影響を与え、この地帯で生物多様性も高くなる」というあたりが一般的なイメージだと思われます。

農家は自らの田畑や生活のために背後にある自然から薪炭を切り出し、刈敷や草肥を採集して田畑に投入し、持続可能な生活を続けてきたとイメージづけされ、SATOYAMAは今後の持続可能な社会を実現するための重要なコンセプトだと日本の環境省から発信しているキーワードでもあります。

 

しかし、太田猛彦「森林飽和」やタットマン「日本人は森林をどのようにつくってきたのか」ほかの森林の歴史を詳述した書籍によれば、江戸時代以降の日本の山は8割がたはげ山であり、森林は徹底的に収奪されてきたということがわかります。持続可能な生活とは程遠い姿です。資源は森林だけだったからです。

背後に豊かな森林を擁した里山イメージは高度成長期以降のわずかな期間に現れた、長い歴史からみれば瞬間的な事象にすぎないのではないか、と私は疑問をもつようになりました。

 

その良いイメージの里山観を背景に展開されているのが農村再生、村おこし事業です。昔は農山村が持続的な生活文化をもち、住民たちは精神的に豊かな暮らしをしていた、その文化を取り戻し、再び農山村を活性化しよう、というものです。少し大雑把すぎるかもしれませんが、このような論調が主流だと思われます。

 

しかし、歴史をもう少し俯瞰的に見れば、鎖国していた江戸時代を通じて産業はすべて国内資源を利用していますし、その資源はほとんど森林から得られるものでした。森林を使い尽くす勢いだったのです。

現代に生きる私たちは様々な道具類を何も考えずに使っていますが、江戸時代に生きる庶民、都市生活者の使う生活用具など様々な製品は誰が作り、どこから調達したものだったのでしょうか。

 

そうした例を列挙してみましょう。

薪炭はもちろん農家だけでなく都市住民も必要としていましたし、建材、家具、食器(木の器や箸など)は木材そのものを資源としています。陶磁器は大量の燃料を必要とし、和紙もまた木を加工したものであり、漆器の材料漆もまた山のものです。養蚕が盛んだった地域は桑の木を大量に必要としました。照明は蝋燭であり、櫨(はぜ)の実から搾り、固めたものですし、油は菜種油で行灯は木と和紙で作られています。日常の履物であった下駄は林業地帯の特産品でした。昨日から始まったNHKの大河ドラマ「青天を衝く」の主人公渋沢栄一の生家は養蚕を営んでいました。蚕は大量の桑の葉を食べますから桑畑も広大でした。

刀剣や包丁は鉄から大量の炭を使った精錬され、もちろん鋤鍬のような農具も鉄で作られたものです。塩も海岸の塩田で製造されますが、塩専用に確保された燃料用の山は塩木山と呼ばれていました。大量の炭を製造するのに、山一つが簡単にはげ山になりました。

肥料は草山から、牛馬の飼料も草山です。

こうした道具、雑貨、食物はどこで誰が作っていたのでしょう。原料のある山の近くであったに違いありません。そこを里山というかどうかは、各地の地理的条件によりますが、原料と製造は直結していた例が大半だと考えてよいでしょう。もちろん江戸の町にも職人はいましたので、家内制手工業として細かな細工物は市中で製造していた例も多いと思われます。

しかしこうした原料からの一次加工、二次加工の製造現場が里山と呼ばれる場所に多くあったと考えていいでしょう。とすると里山は一次産業地帯ではなく、二次産業地帯、製造業の拠点だったということができます。石油石炭などの燃料や電力事業に当たる薪炭製造、照明器具製造、家具製造、生活雑貨製造、製靴業、製陶業、製塩業、製鉄業、肥料飼料製造、製紙業、製糸業などが該当します。

里山は農林業地帯ではなく、製造業の集積地でした。拠点は各地に分散していますので、現代風の集積ではありませんが、分散的集積とでもいうべきでしょうか。

その物の流れを簡単な図にしてみました。

Photo_20210215094401

 

続きを読む "里山と産業と村おこし~里山は二次産業の集積地?" »

2021年2月10日 (水)

「絶滅したオオカミの謎を探る」展 中央区環境情報センターにて

「絶滅したオオカミの謎を探る」展
中央区環境情報センターで開催します。
 
日本列島にかつて生息していたオオカミの謎に現代科学の研究成果で迫ります。また日本の森の生態系や森林の現状について紹介しながら、生態系の中で本来あるべきオオカミの役割を解説したパネル展です。
 
期間 2月16日~3月31日
場所 中央区環境情報センター
東京都中央区京橋三丁目1番1号 東京スクエアガーデン6階
 
東京メトロ銀座線「京橋駅」3番出口直結
JR「東京駅」八重洲南口より徒歩6分
入場無料

 

« 2020年12月 | トップページ | 2021年3月 »