「日本のシカ」 第6章 捕食者再導入をめぐる議論(梶光一) のミスリード⑤オオカミがもたらす見掛けの競争は悪影響か?
オオカミ復活論入門
「日本のシカ」 第6章 捕食者再導入をめぐる議論(梶光一) のミスリード⑤オオカミがもたらす見掛けの競争は悪影響か?
2018年11月26日
号外No.12
By
Asakura
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梶光一氏は、編著「日本のシカ」の中で、第6章「捕食者再導入をめぐる議論」を特に設け、日本へのオオカミ再導入を否定しています。
結論部分で、梶氏自身の見解として、
「ロイヤル島、イエローストン、ヨーロッパにおける捕食者であるオオカミとシカの関係は一様ではない」「オオカミとシカをめぐる関係は思ったより複雑なのである」
知床でも縦割り行政や土地利用、少ない人員と予算を考慮すると「オオカミを再導入できる段階ではない」つまり現実的ではないと書かれています。
「オオカミとシカの関係は一様ではなく、複雑なのだ」ということがオオカミ再導入をためらわせる原因の一つのようです。
その文脈で「見かけの競争」を持ち出されているのですが、これを考えれば考えるほど、オオカミ再導入を考えてはならない理由とは、とても思えないのです。
●「オオカミがもたらす見掛けの競争」
前段でオオカミがシカ生息数を調節した例、できなかった例、狩猟と並行して効果があった例を挙げ、次に2種の被食者がいる「見かけの競争」としてカナダとフィンランドの二つの例を解説していますので、これを検討してみたいと思います。前述したようにこの章の結論は、「オオカミ再導入は現実的ではない」ということですので、この事例もオオカミの介入によって「絶滅危惧種が減少してしまう」という不都合が起きることの例示のようです。
●「見かけの競争」
「見かけの競争」とは、1977年Holtが論文で定義した用語のようです。ここにある
「被食者1は被食者2に『悪影響』を与えるような相互関係をいう」と、そのまま書かれているのかどうか、原著を確認しようとしていますが、わかりませんでした。
ただ、こう書かれています。
「同質的な生息地にいる2種の獲物動物は共存することが難しい」
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