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オオカミ復活

2018年1月12日 (金)

【メルマガ】オオカミ復活論入門配信始まりました

メールマガジン配信始まりました。
第一回は1/8、第一~第三月曜日の配信です。1月は1/8、1/15の2回、2/5、2/12、2/19と続きます。

オオカミ復活論入門

誰でもわかるオオカミ復活を知るためのの理論、歴史、文化、思想

http://www.mag2.com/m/0001681617.html

配信予定は、今のところ以下のとおりです。

No.1 オオカミ再導入による復活のゴールはどこ?
No.2 大台ケ原はいかにして白骨樹林となったか
No.3 伊豆天城峠は沢が石で埋まっている
No.4 ブラタモリ青木ヶ原樹海編で語られなかったこと
No.5 オオカミはどこにいる?
No.6 オオカミは何を食べる?
No.7 オオカミが日本に戻ってきたら何を食べる?
No.8 オオカミは誰と暮らす?
No.9 オオカミのナワバリってなに?
No.10 オオカミの狩の能力
No.11 オオカミとイヌの姿かたちの違い
No.12 ニホンオオカミはいついなくなった?
No.13 オオカミが生態系の中に存在することはなぜ重要なのか
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
まだまだ続く

よろしくお願いいたします。

2017年7月30日 (日)

オオカミは日本の森林を守ることができるか?

「日米独オオカミフォーラム2016」で来日されたシャノン・バーバマイヤ博士がインターナショナルウルフセンターの機関誌International Wolf Magazineに、日本のレポートを寄稿されました。

 

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A Look Beyond

 

という欄にありますが、HPに掲載されているのはさわりだけなので、全文を翻訳しました。

 

 

Shannon Barber-Meyer

 

シャノン・バーバーマイア (アメリカ)

 

 学術博士。イエローストーンや五大湖地方のオオカミによるシカ類の頭数調節を研究。合衆国地理調査研究所(USGS)研究員。

 

 

International Wolf Magazine

 

Summer 2017

 

http://www.wolf.org/wolf-info/wolf-magazine/summer-2017/

 

 

 

A Look Beyond

 

Can Wolves Help Save Japan’s Mountain Forests?
by Text and photos by Shannon Barber-Meyer

 

Japan is facing a major problem. The understories of its beautiful mountain forests are being killed by overabundant sika deer and wild boars. Even taller trees are suffering from bark stripping
and girdling by deer. Efforts to halt soil erosion on steep mountain slopes consist of concrete lattices and soil “dams” embedded into the mountainside. Fences are erected to keep deer out—but fences must be maintained, deer can jump fences, and fencing simply can’t be put everywhere it’s needed.

 

 

 

日本は大きな問題に直面している。美しい森林の下層植生が増えすぎたシカとイノシシによって殺されようとしている。高木でさえシカによる樹皮剥ぎで影響を受けているのである。

 

切り立った山の斜面からの土壌流出を止めるために格子状のコンクリートと砂防ダムが造られている。シカ入れないためにフェンスが建てられているが、フェンスは維持管理しなければならないし、シカはフェンスをジャンプしてしまう。それにフェンスが必要なところにどこでも建てるわけにはいかない。

 

正規のハンターになるには複雑な資格要件が必要なこともあり、ハンターの数は限定され、シカやイノシシの頭数を許容可能なレベルに抑えられずにいる。そして科学者は気候変動がこの問題を悪化させると指摘している。最近の降雪が少ないため、シカが今までなら通うことができなかった山岳地帯へ年間通じて通うことができるようになった。

 

オオカミはこうした死につつある日本の森林を救うことができるだろうか。

 

日本のオオカミは1905年までに、家畜を襲ったことが原因で人間が迫害し、懸賞金をかけて、また狂犬病やその他の病気が原因で絶滅した。ふたつの亜種がもともといたと認識されている。エゾオオカミは最北の島北海道に(この島はカムチャツカ半島に隣接している)、もう一つのニホンオオカミは本州と他の島で見つかっている。(朝鮮半島に隣接している)絶滅以来、オオカミ目撃の噂はあるけれども(おそらく野生のイヌだが)、アメリカ人動物学者が採集した標本によって本州で記録されたのが、日本で最後のオオカミである。

 

1990年代前半から、日本オオカミ協会(JWA)は農村地帯の生態系修復だけでなく、文化的にも重要な動物(オオカミは神話や民話に描かれ、多くの日本人にとって神聖な動物である)としてオオカミの日本への再導入を提案してきた。201610月、JWAは私と他に二人の人物を招聘し5都市で「日米独オオカミフォーラム2016」を開いた。私は、オオカミと獲物の関係に関して発表し、オオカミは獲物動物を減らす傾向があることが科学的に明らかになったと説明した。この効果は特に、オオカミが狩猟の対象とされず、人間が有蹄類を狩猟する(たとえばシカやムース)、そしてクマが存在する場合に起きる。

 

私が聞いた日本の森林に関する発表によれば、また三つの島(本州、四国、九州)を旅し、シカとイノシシの増えすぎによりダメージを受けた山を訪ね、また破壊の驚くべき速さを見て、私は確信するようになった。オオカミが役に立つ。

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2016年7月17日 (日)

オオカミ再導入とマングースの失敗【再々】

「オオカミ再導入なんてバカなことを言ってはいけない。沖縄や奄美のマングース導入がどんなことになったのか知らないのか」

というようなことは、以前から言われていた。最近はなかったので沈静化したかと思っていたら、またちょっと出始めた。

この「オオカミ再導入」論議に新規に参入する人たちが再燃させるようだ。

新規に参戦する反対派の方たちは、この記事を読んでから来てほしいものだ。


オオカミ導入はマングース導入と同じ?①

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/36556579.html

オオカミ導入はマングース導入と同じ?②

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/36556602.html

オオカミ導入はマングース導入と同じ?③

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/36556630.html

オオカミ導入はマングース導入と同じ?④

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/36556649.html

オオカミ導入はマングース導入と同じ?④

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/36556665.html

2015年3月25日 (水)

「ウルフ・ウォーズ」発刊

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イエローストーン国立公園にオオカミが復活したのは1995年。実現に至るまでの20年間にどんなことがあったのか、日本では今まで誰も知らなかったのです。


原著出版から20年たつというのに、いまだにイエローストーン公園のビジターセンターには必ず置かれている傑作を翻訳しました。


この物語は、日本のオオカミ絶滅と復活、そしてシカ問題の解決に大きな関わりがあります。たくさんの人に読んでいただきたいと願っています。

 

今年6月には、この本に登場するオオカミ博士、デイヴ・ミッチ博士が来日します。彼に聞きたいことは山ほどあります。たくさんの方に参加していただけるようお願いいたします。

シンポジウム【オオカミシンポ2015:復活と保護】

http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2015/01/dr-wolf-d2015-b.html

 

2015年1月22日 (木)

Dr. Wolf  D・ミッチ博士来日決定!【オオカミシンポ2015:復活と保護】

2015年、日本オオカミ協会は、オオカミの世界の第一人者、D・ミッチ博士を招聘し、全国でシンポジウムを展開します。


日本オオカミ協会ホームページ

http://www.japan-wolf.org/

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2014年6月12日 (木)

ビーパル(BE-PAL)6月号日本の森にオオカミを放つべきなのか?

ビーパル6月号が、オオカミ再導入について取り上げていたので、さっそく購入して読んでみた。

Photo

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表紙には

「緊急提言 日本の森にオオカミを放つべきなのか?」

とあったので、どんな鋭い反対論が展開されるのかと期待して開いたところ、表紙にあるタイトルとはちょっとニュアンスの違う本文が展開されていたのだった。

本文のタイトルは 

「ほんとうの森の姿とは?生態系から欠落した「オオカミをめぐる意見」から考える」

である。

この食い違いはどこからくるのだろうか。ひょっとしたら、編集部が強気に「オオカミ再導入反対」を強調し、「緊急提言」しよう!と意気込んだのかもしれない。ところが書き手はなぜだか自信がなく、このようなタイトルになったのかもしれない、と邪推している。

な~んだ、がっかりだ、と思ったが、内容にもがっかりした。

この本文の筆者、鹿熊勤さんの

ほんとうの森の姿とは?

生態系から欠落したオオカミをめぐる意見から考える

を要約してみた。この記事は4つのパートに分けられ
 

森について

森は遷移するものだ・植物は環境に応じて次々に入れ替わり、100年もかけた静かな競合を勝ち抜いた大きな木が光を独占し、安定的な生態系、極相・原生林ができあがる。そこに人間が関わると植物たちの戦国時代のような競合が始まる。

人の手で遷移を止められた自然林が里山とみなされ、生物多様性が高い。遷移の途中にある自然林は、人の手が加わらなくなれば、樹種の競合が再開され、極相へと向かう。

一番の問題は植えっぱなしの人工林だ。

森が人をひきつけるのは「生命の気配」

 人が森に行きたくなる理由は、「生命の気配」への期待であろう。森は生物多様性が高い空間だ。教科書にあるような食物連鎖が今も繰り広げられている。大型哺乳類から小型哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類や魚類、甲殻類、水生昆虫、土中の小動物、植物や菌類、バクテリアなどの無数の関係性は、食う食われるだけでない壮大な自律システムだ。だが現在の日本の森には重要なピースがいくつか欠けている。

獣害問題の発生について

野生動物、特にシカの激増は獣害として問題になっている。地域によっては森が裸地化しているところもある。かつて日本の森には、オオカミと人間の二種類の頂点捕食者がいた。農耕が始まって以来、獣害は絶えたことがないが、森の植生が変わるほどシカが増えるバランス異常はかつてないことだった。しかし、そもそも最初に植生を大きく変え、森のポテンシャルを低下させたのは人間だったのだ。

オオカミがいなくなって以来、シカのコントローラーとして機能していたのはレジャーハンターだった。もう一つのシカの増殖抑制要因は乱開発だった。しかし、地方の人口急減、耕作放棄地や放置人工林の増加で遷移が進み、シカが増える要素が高まる一方でハンターは森の中にも里にも足りない。

オオカミ再導入に対する反論

問題解決の切り札としてオオカミを復活させよという声があるが、生態系内の役割は認めざるを得ないが(筆者は)個人的には、実現するとしてもかなりの時間がかかるだろうと思っている。日本の森はどこも人の暮らしと背中合わせであり、第一の利害関係者はそうした住民たちである。その人たちのオオカミへの恐怖を拭い去るのは容易ではないし、再導入は社会に強いストレスを与えるに違いないからだ。トキやコウノトリの野生復帰とは訳が違う。生態学的なロマンチシズムで進めてはならない。

オオカミ導入より先に森に導入すべきは、「失ってしまったピースの大きさを、より多くの人が実感として理解することが大事ではないか。シカが引き起こしている問題の実態や、オオカミがいた時代の豊かな自然をリアルに振り返ることのできる、学びと反省のシステムだと思う。」

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2013年11月24日 (日)

エド・バングス語録「オオカミは面白い!」

1988年アメリカ魚類野生生物局で、イエローストーン公園へのオオカミ復活プログラムの仕事を始めたエド・バングスは、誰に対しても「オオカミは面白い!」と言い続けた。

「どうしてオオカミを復活させることを謝らなきゃならないんだ?」

「野生生物局は、エルクやビッグホーンシープを西部のもといた地域に復活させることに大きなプライドをもっているじゃないか。どうしてオオカミ復活にはプライドがもてないんだ?」

「オオカミは注目に値する魅力的な動物だよ」

「オオカミは人間を襲わない」

「オオカミは土地利用には関係がない」

「オオカミは経済を侵害しない」

「家畜を食べるかもしれないが、ほんのちょっとだ」

「そのうえオオカミは魅力的だ。多くの人たちがオオカミを好きになるし、野生のシンボルと考えるようになる」

オオカミは面白い!

「WOLF WARS」 HANK FISCER著より

2013年9月18日 (水)

2002年知床はオオカミ再導入に傾いたことがある Ⅱ

 2002年の、知床100平方メートル運動機関誌「知床の森通信」2002年5月号)の再導入宣言から、どういう経過で、【反対】に行き着いたのか、その経過は明らかにされていない。

まるで密室で決められたようだ。

 機関誌には、その議論の経過が掲載されたことはないし(ずっと購読してチェックしている)、インターネットで検索しても、まったく出てこない。


 唯一、痕跡が残っているのが、知床博物館研究報告だ。


2005年26集(2005年3月刊)
http://shir-etok.myftp.org/shuppan/kempo/kempo26

「肉食獣の再導入問題をめぐって」石城謙吉 中川元 

http://shir-etok.myftp.org/_media/shuppan/kempo/2606_ishigaki-nakagawa.pdf

「オオカミ( Canis lupus) の保護管理及び再導入事例について」亀山明子・仲村 昇・宇野裕之・梶 光一・村上隆広

http://shir-etok.myftp.org/_media/shuppan/kempo/2607_kameyama-etal.pdf

「100 平方メートル運動の森・トラスト」と絶滅種の復元  石城謙吉

http://shir-etok.myftp.org/_media/shuppan/kempo/2605_ishigaki.pdf

絶滅種の人為的導入に関する法制度および社会的側面の課題~オオカミとカワウソを例として 加藤峰夫

http://shir-etok.myftp.org/_media/shuppan/kempo/2608_kato.pdf



 

 

 

2006年27集(2006年3月刊)

http://shir-etok.myftp.org/shuppan/kempo/kempo27


知床に再導入したオオカミを管理できるか 米田政明

http://shir-etok.myftp.org/_media/shuppan/kempo/2701s_yoneda.pdf


 これだけ。これで終わりだ。この2006年を境に、知床からオオカミに関する話題は出てこなくなる。

 2005年は、専門家委員会の石城座長が退任するタイミングだったと聞き及ぶ。


【この研究報告は、投稿スタイルのため、内容について博物館側の査読が行われるようなタイプのものではない。知床と多少のつながりがあれば、審査なしに投稿できるはずだ。】




2005年の26集が発刊された直後に、国際哺乳類学会議のなかで行われた知床が世界遺産に決定したことを記念したシンポジウムがある。

このシンポジウムで、イエローストーンから招いた研究者が、熱心に、謙虚に、知床へのオオカミ再導入を勧めるのに対して、日本側研究者は、ひたすら逃げまくる。

「私たちにはできない」の一点張りだ。

反対の理由を整理するとこんなことになる。

① とにかく予算がない、人がいない

② 組織が一元化されていない バラバラにそれぞれの思惑で動く

③ 環境省上席担当者は1~2年で交代し、政策の継続性がない

④ どこがイニシアチブを持っているかわからない

⑤ 人々のオオカミに対する意識は100年の間に悪化している

⑥ 畜産業の反対があるにちがいない

⑦ 多すぎるシカが減らせるかどうかわからない

⑧ 環境改変によって、環境収容力が増加しているかもしれない

⑨ 野生動物による被害補償制度は制度的概念さえない

(⑩法律が整備されていない)


この様子は、「世界遺産 知床とイエローストーン~野生をめぐる二つの国立公園の物語」

という本に詳細に記録されている。それについて、私が整理しているのがこれ。

http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/33901873.html


この2005年から2006年の間に、知床の「オオカミ再導入」に関する意見は180度転換した。

キーマンは誰だろう。



2013年9月10日 (火)

2002年知床はオオカミ再導入に傾いたことがある

知床100平方メートル運動機関誌「知床の森通信」2002年5月号に、以下のような記事が掲載された。

「復元生物の検討がさらに進みました」という見出しの下、絶滅した哺乳類としてオオカミとカワウソが紹介されている。

 

「両種とも再導入には多くの課題があり、今すぐの実現は困難。しかし、本来の自然の営みを復元するためには欠かすことができない主役たちである。すでに絶滅しており、ロシアなどに遺伝的な違いの少ない種が現存していることから、再導入しても遺伝子汚染とはならない。知床であればこその「百年の夢」として引き続きじっくり検討していく」

このとき知床100平方メートル運動の森林再生専門委員会議の座長、石城謙吉座長が、

「専門委員会議が全国に先駆けて生物相の復元を重要な課題として取り上げ、その中でとくにカワウソとオオカミなどの復元を本格的に検討しているのは、食物連鎖の頂点に立つ食肉獣の復元こそは、原生的な自然の再生という「しれとこ100平方メートル運動」の主旨に沿うものと考えるからです」

自分たちが先頭切って検討を行うという決意を述べられています。

このときの専門委員の先生方は(肩書きは当時)

石城謙吉 北海道大学名誉教授

青井俊樹 岩手大学農学部教授

梶 光一 北海道環境科学研究センター自然環境保全科長

甲山隆司 北海道大学大学院教授

石川幸男 専修大学北海道短大教授

山崎 猛 運動推進本部役員

石井政之 運動推進本部役員

その後、なんのお知らせもなく、いまは知床は、オオカミ再導入はできないといっているようです。

だまされたよね。

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2013年9月 5日 (木)

「ネバー・クライ・ウルフ」の功罪

 

オオカミのイメージが悪かったのは、ヨーロッパもアメリカも同じだ。

 

アメリカではイエローストンへオオカミ再導入されるまでに、そのオオカミイメージがある程度よいものに転換した。

 

アメリカでオオカミのイメージを大きく変えた書物が、オオカミを追い続けて研究したアドルフ・ムーリーの「マッキンレー山のオオカミ」(1944)と、カナダ人小説家ファーレイ・モウワットの「ネバー・クライ・ウルフ」(1963)だ。

 

特に「ネバー・クライ・ウルフ」は、その後ディズニーが映画化するなど、オオカミのよいイメージを作り上げた功績は大きい。

 

モウワット自身と思われる主人公が、アラスカのオオカミを追いかけて、イヌイットの村に住み、なおかつオオカミの食べるものまで追体験してみせるというシーンは、強いイメージを残したらしい。

 

しかし、そのイメージが強すぎ、この作品が小説だということを忘れさせてしまう罪もあった。フィクションを本当のことと信じさせてしまうとは、小説家としては賞賛されるべきかもしれない。

 

 

「ネバー・クライ・ウルフ」のエピソードは、アドルフ・ムーリーの研究成果を脚色したものだった。

 

ハンク・フィッシャー(ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ)は、イエローストーンへのオオカミ再導入の経験を描いた「ウルフ・ウォーズ」で、「ネバー・クライ・ウルフ」について、こう書いた。

 

 

 

 ムーリーの科学的論文とモウワットの本は、クライマックスのシーンで著者がオオカミの巣穴に入り込むところまで、驚くほど似ている。モウワットはあれは自分の経験だというかもしれないが、彼の本のほとんどはムーリーからの借り物のようだ。彼が他の研究者に信用がないため、彼の本は、科学者からは酷評されることになった。その一つがピムロットだった。(ピムロット:カナダ人研究者、アルゴンキン公園でオオカミの研究に従事。カナダで尊敬を集める生態学者)

 

 

 ピムロットは、その本について「空想とファンタジーと他の研究者の成果」のブレンドだと形容した。モウワットの上手さと共感を呼ぶオオカミの描写は認めるけれどもといってこう結んだ。「もしこれが本当に事実に基づくフィクションとして発表されたなら、ネバー・クライ・ウルフをもっと楽しめただろう。しかし、その発表がノンフィクションとしてのものだったのは、たいへん残念なことだ。」

 

それにもかかわらず、この本はそれ以前の科学的な業績をあわせたよりも、一般市民のオオカミへの興味と関心をかきたてた。

 

 

 

 

この本の功績は、オオカミへの関心を高め、イメージをよい方向に引っ張った一方で、ファンタジーを事実と思い込ませてしまった。

 

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