長野県ニホンジカ保護管理計画 特に植生衰退度の調査結果は恐ろしい
今月初め下記のような騒動が報道されました。
荒川河川敷逃走のシカ捕獲…警察官ら約10人がかり、足立区危機管理部「早期に解決して良かった」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200604-06030364-sph-soci.view-000
(スポーツ報知)
「東京・足立区の荒川河川敷で3日、シカが捕獲された。午前9時ごろ堀切橋付近で目撃情報があり、警察官や区職員ら計30人以上が集結。同11時41分、草むらから姿を見せたところを、網を使って取り押さえた。」
その後、殺処分か引き取り手を探すか、という記事が続きました。
捕獲された「荒川のシカ」に殺処分の危機 東京都「ペットとしては飼えない」
捕獲の理由を足立区は
「地域住民の安全のため、シカの捕獲許可を申請し、都がそれを認めた。シカが河川敷から市街地に出れば、道路で車や人にぶつかるおそれがあったからだ。「シカは大きいし、動きが早いし、飛び跳ねるんです」(区の危機管理部)
とメディアに説明しています。
問題は荒川河川敷伝いに東京に侵入したであろうと想像できることです。
荒川上流にはシカの高密度生息地帯があり、関東山地の広域で頭数調整のため捕獲・駆除されています。そうした生息地から若いオスが単独で群れを離れ、新たな生息地を探しに出ることはよく見られる現象であり、たとえば岩手の五葉山あたりの群れから離れ、さらにどこかで増えて生息地を拡大し、八戸や秋田方面に移動する個体が目撃されたり、白神山地でカメラに写ったりしていることと同様の行動であると思われます。
今回の騒動だけでなく、関東の周縁部ではシカと鉄道の衝突事故も増え始めており、従来の生息地からはみ出して行動する個体が増加していることも推測できます。
東京圏の場合には、その移動がおそらく河川敷を通じて行われるであろうということも今回のケースから予想できます。
今後、多方面からシカが東京圏に向かうであろうということも類推できるところです。
そうだとすると、河川敷を伝って移動するということから見れば、下記の地図のように、上流部に高密度生息地を持っている多摩川、逆に利根川下流部にキョンが生息地を広げるであろう房総半島はこれから同様の現象が起きてもおかしくないだろうと思います。
まだどこにも情報として出ていないので、警報の意味で
昨年夏に、五日市からバスに乗って、数馬周辺の山に登ってみた。山梨との県境の尾根で、大羽根山という。そこは登山道にシカの食害によるディアラインがくっきりとついている。シカ害がモザイク状に現れるような状況で、私の独断の推定生息密度は、およそ20頭/平方キロ。
その尾根を南東方向にたどっていくと、陣馬山に、さらに行くと高尾山に到達する。このシカ害はいずれ高尾山まで行くだろうな、と心配していた。
その後、11月に高尾山を歩きに行ったところ、蛇滝から登った北斜面、ケーブル駅のすぐ下あたりでにシカの食害らしき痕跡を見つけた。杉林の下層のアオキがほとんどなくなっているところが目に入ったのである。
高尾山にシカが来てしまった!と思った。
ビジターセンターで聞いてみたところ、こんなことを教えてくれた。
・11月11日に行われた高槻成紀さん(麻布大元教授)の講演(タイトル「高尾山のシカ」)後、ビジターセンター(つまり山頂)周辺を歩いているときにもオスジカの鳴き声が聞こえた。当然食痕も見つかった。
・高尾山の北側斜面にはもう多くなっている。
・陣馬山では既にシカの食痕がはっきりと確認できる。
・景信山周辺ではセンサーカメラに写っていた。
・3年くらい前から急に増えた
夏に某所で話をしたときに、「五日市のシカの様子から見ると、5年以内に高尾山まで来ますよ」と予言したつもりでいたのだが、甘かった。5年後ではなく、3年前に来ていたとは。
北側斜面は杉林が多く、林床はアオキが繁茂しているが、高槻さんの講演でも、「最初にアオキがなくなる」と話していたという。
まさにアオキがなくなっていた。
シカ対策はまだ立ち上がっていないどころか、シカが増え始めたことに気付いている人も少ない。都がやるのか市がやるのか、どうやって防ぐのか、柵を作るのか、どうするのだろう。
え~?ここでっていうところまでシカの痕跡があった。
静岡県側の十里木という地区から、高鉢駐車場から森に入る村山古道、それから富士スバルラインを登って、五合目あたりの森林限界を散策する御中道。そして青木が原樹海と大室山。富士山を南から北まで走ってみた。
十里木カントリー近くの植林地
標高1100m
食害写真はないが、それは植林地が柵でなんとか守られているため。
現地到着までの経路では、たくさんの食害地を見た。
推定10~20頭/平方キロ
西臼塚駐車場
1600m
林道ゲートには、「土日はシカ駆除が行われるので注意」とある。
樹木は、金網で巻かれている。
推定10~20頭/平方キロ
高鉢駐車場から村山古道
1600m
入る早々棒のようになったスズタケのお出迎え。
まだ苔むしたうっそうとした森の雰囲気は残っている。
推定30頭/平方キロ以上。ひどくなったのはおそらく最近2~3年。
前に、ジビエと狩猟の限界、と書きましたが、そうはいっても現在進行中の対策は、狩猟または、駆除、または管理捕獲という方法に関してのものだけです。
以前メディアの取材に対して「シカの抑制は狩猟振興で対応する」と環境省はコメントしています。
では、そもそも狩猟者、狩猟技術者といってもいいかと思いますが、そういった技術を持つ人たちがどのくらいの人数いれば、現在の日本で、シカの頭数を減らすことができるか、その見積もりをされているのでしょうか。
その必要人数に対して、狩猟者の養成策は講じられているのでしょうか。
平成22 年度、「知床半島における効果的なエゾシカ捕獲のための研修業務」として公開セミナー
「知床のシカはコントロールできるのか?」が開催されました。
http://hokkaido.env.go.jp/kushiro/pre_2010/0712a.html
その一連のセミナーの記録が公表されています。知床で行われた際の講演と質疑応答です。
http://dc.shiretoko-whc.com/data/meeting/kouen/h22/kouen_H22_DeNicola_Schaller_gaiyou.pdf
その記録の中から、狩猟者養成に関して、必要な参考情報を抜粋します。ヨーロッパではこうして核になる狩猟者養成を行っているという情報です。
お断りしておきますが、このセミナーの主催者は、「オオカミ再導入」には反対で、狩猟を振興して対処しようとする方たちです。
このテーマでこの知床会場には、ドイツから専門家としてミュンヘン工科大学教授を招聘しています。
これに先立つ東京農工大ドイツでは、狩猟組合のリーダーが代わりに講演していました。そちらは聞かせていただきましたが、ドイツには約30万人の狩猟者がいるということでした。
それでも森林崩壊、衰退が起きているようです。
「ドイツ連邦共和国における狩猟のシステムとシカ管理」
講師Prof. Dr. M. Schaller(ミュンヘン工科大学教授)
(以下抜粋)
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ドイツでは、既にクマとオオカミが絶滅している。現在のドイツの森林には、シカの
捕食者となり得る野生動物は存在しないため、シカの数を減らすには狩猟に頼るしかな
い現状がある。
野生動物による被害や影響には、次のようなものが挙げられる。
・ シカ類やシャモアの増加によって、森林の持続性は危機にさらされている。
・ 生物多様性の減少、安定性の低下が懸念されている。
・ 森林の持続性維持のためにも、有蹄類を狩猟動物としてその生息頭数を管理する必
要がある。
森林の衰退はあちこちで確認されており、斜面崩壊や雪崩などを誘発する。
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また州単位で3年かけて職業狩猟者を養成し、雇用先を用意しています。
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【例】バイエルン州の一般狩猟試験の場合
ü 筆記試験100 分で狩猟教育分野から100 問の出題
ü 口答試験は6 分野あり、各分野10~15 分程度
ü 実技試験は銃器の扱い方など約20 分間の他、射撃試験
ü バイエルン州の場合、試験は年4 回、州内の18 箇所で実施。1 か月の間に
4 日間かけて実施される。試験費用は約3 万円
ü 2009 年は全国で約1 万人受験。合格率83%
【例】バイエルン州における一般狩猟教育と訓練
ü 準備コースは週に2 回6 箇月間のコースと、120 時間期間を集中して受講
するコースの2 種がある。銃器の扱いと射撃実技訓練を行う。
以上が一般狩猟免許の取得に必要である。職業狩猟者になるためには、さらに3 年程
度の研修が必要である。次に職業狩猟者とは具体的にどのようなものであるかを概説す
る。
ドイツには約1,000 人がアカシカの生息する山岳地方を中心に職業狩猟者として業務
に従事している。年間30~40 人を対象に職業狩猟者になるための教育が行われており、
バイエルン州に限ってみた場合は、毎年10~12 人が教育を受けている。
教育分野は、狩猟・猟場管理、経営管理学、狩猟動物マネジメント、肉処理と取引、
狩猟動物の保護、動物福祉、自然環境保全、生態学、持続可能性、モニタリング、病理
学、被害防止、狩猟犬の訓練、林業、安全管理事故防止、広報、野生動物・自然環境学
など、極めて多岐にわたり、全てを学ぶには3 年くらい必要となる。但し、志願者が既
に農業技術、林業の関連教育を受けている場合、職業訓練は2 年に短縮される。
中間試験は2 年目までに受験し、最終試験(実技・口答・筆記)に進む。これに合格
して初めて職業狩猟者として就業可能になる。
では、職業狩猟者の就職とはどのようなものがあるだろうか。
バイエルン州では、雇用需要に合わせて必要な人数のみ訓練教育を施しており、雇用
先は州森林管理機関(行政)、私有林所有者、コミュニティ森林(市町村有林)などが挙
げられる。
職業狩猟者の種類には、狩猟森林官、区域狩猟者の二つがある。狩猟森林官(森林官
はその全員が狩猟者である。)にとって、狩猟教育は大学で修めるものであり、狩猟は森
林官の仕事の一部であると言える。但し、あくまでも森林保全が第一であり、狩猟はそ
の森林保全のため、ツールとして重要、という位置づけである。
区域狩猟者はプロの職業狩猟者で、主に山岳地方で従事しており、約1000 人がこれに
該当する。
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彼は、狩猟者数が問題ではなく、プロフェッショナルがいれば、1000人で十分、といっています。
ただ、それでも森林の衰退は防げていませんが。
少なくとも、環境省が「狩猟でシカを抑制できる」というなら、このくらいの養成教育、そして職を用意しなければならないと思います。
現在報道や環境省発表に見る狩猟者増加の対策は、狩猟期間や狩猟対象の規制緩和や、わな猟の推奨程度のことでしかありません。
このセミナーからもう2年経っています。環境省が関わり、自然保護官が参加していたはずなのだから、現状を正確に認識し、対策をたてようとしているのであれば、この方向で狩猟者養成策を早急に実現すべきだと思います。
そこまでやっているなら、「狩猟者養成でシカの個体数管理は可能」という言い分を認めてもいいでしょう。それさえ着手していないのですから、環境省は本気とは思えません。
ただし、こちらの認識は、「それでも人間はシカの個体数管理を達成できない」というものです。理由は、「狩猟とジビエの限界」で書いたとおりです。
哺乳類学会に参加して<ミソサザイからの報告>
オオカミ復活による生態系修復という提案に対して、「他に有効な方法があるのであれば、オオカミの再導入のような不確実な方法は検討にも値しない」のような反対意見がありますが、その反対論の念頭にあるのは、「特定鳥獣保護管理計画」を初めとする、「ヒトの手による頭数管理」にあります。
その特定鳥獣保護管理計画の現在の状況を確認できる機会でした。
結論を先に言えば
【特定鳥獣保護管理計画の立案・実施は迷走している】
ということです。
自由集会 ニホンジカの特定鳥獣保護管理計画の現状と課題
この自由集会は、哺乳類学会のシカ保護管理検討作業部会(特にシカについて専門的にさまざまな検討や集会の企画、調査などを行っている研究者たちの集まり)が、シカの特定鳥獣保護管理計画(以下、特定計画と略。特定計画の簡単な解説はこちら
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1909)
を策定している36都道府県の行政担当者にアンケート形式のききとりを行い、その結果の報告と、今後の方向性や抱えている問題点・課題を共有する、というのが目的の集会だった。
その概要のうち、印象に残った発表および発言は以下の通り。ただし、参加者は互いに顔見知りらしく、内輪話のように始まることが多かったので、発言者が不明のまま発言の背景がわからないことも多くあり、省略しているものもあるのが残念。【 】内は筆者の感想。
●特定計画における管理目標
目標はシカの個体数および分布拡大の抑制に重点が置かれている。特に「分布拡大の抑制」を掲げる自治体が増えた様子。
特定計画は「対象種(=シカ)の存続」と「人との軋轢を回避する」という、相反する目的を達成することが目的で策定されるものだが、シカ対策としてよく報道などで目にするジビエなどの「有効利用」を目標に掲げているのは2自治体のみ。
●数値目標
この計画の目標として掲げられる数値というのは「捕獲数」だったり「生息密度」だったり「シカによる被害量」だったり、地域の実情に合わせてさまざま、まちまちで統一されていない。中には「管理施策」そのものが目標、という自治体もある。
数値目標が全国一律でないことは「地域の実情に合わせるという特定計画の趣旨」に合致しており、これは「のぞましい状況」なのだとのこと。(つまりこの特定計画では、過去の「地方」のイメージであるところの「横並び・前例主義・省力主義・中央だのみ」は通用しない。地方にとっては、マンパワー的にも財政的にも、かなり厳しい制度。)
この点で「シカの有効利用」に関する自由集会に参加されたらしい方が、その会場では「自治体の予算が切れたら頭数管理は終わり」との発言があったとつぶやいているのが聞こえた。
●目標の達成状況
その、地方オリジナルの目標を「達成した」と答えた自治体 39.3%。「8割以上達成」が21.4% 「8割未満の達成状況」が14.3% のこりは「その他」
地域の実情に合わせた目標ですら、達成できたのは4割。
推定頭数に対しての、管理捕獲目標頭数の割合はバラバラで、推定頭数の何割を捕獲すればいいか、という理論値も定かでなく、目標自体も各地方により捕獲数、被害額、生息密度とバラバラ。
さらに問題なのは、たとえば目標とした「捕獲数」は達成したはずなのに生息数や被害額が減らないなど、この特定計画がまだまだ実効性のあるものになっていないということ。
●狩猟規制の緩和
狩猟圧を高めるために既存の規制を緩和しているのは25の自治体。猟期の延長、捕獲数の上限の緩和(1日あたりの捕獲数を無制限にしている地域もある)ワナ猟の増加に伴いその方法の規制緩和、鳥獣保護区でもシカは例外扱いにする・・等など、できるところからの緩和を進めているが、狩猟者数減少の影響の方が大きいためこの規制緩和が狩猟圧の増加に寄与していない自治体もある(長野県など)
●個体群モニタリングと将来予測にもとづく捕獲計画の現状と課題
許可捕獲に関して、現場から上がってくる情報の中で捕獲個体の性別が「不明」となっている割合が増加している、との報告あり。
会場からも質疑応答で「幼獣の割合が増加したせいでは?(角の有無などパッと見で雌雄が判別しづらい)」との質問があったが、そうではなくて、現場からモニタリングのデータを扱う研究者のところにまで情報が届く途中で不備のためうやむやになってしまう、という場合の方が多いとのこと。
【目標達成のためのごまかしとまでは言えないしそう考えたくはないけれど、というような空気が一瞬流れる】
これは、科学的な根拠にもとづく施策である特定計画の根底をゆるがしかねないことでは、と思うが、その重要性を研究者が現場に伝えきれていないのでは、という課題として共有された様子。
また、将来予測そのものをしない自治体が増えている。目標の見直し時期についても、毎年見直しをする自治体も多い一方で「5年に1度」だったり「目標の見直し」については全くふれていない自治体もあり、将来予測をあきらめているのでは、との意見が聞かれる。
モニタリングで調査する項目(データとしてそろえておく項目)が減少しており、これは各自治体の財政状況が影響しているのでは、とのこと。将来を予測することは「あきらめたのか?」将来予測や必要なモニタリングの減少は、その重要性に対する意識が現場で低下しているのだと思う。それは人員、予算不足が影響しているのではないか。
大阪のアンケートからは、「事業仕分けで予算カットと人員削減でできない」と怒りのコメントが返ってきたと報告され、会場から失笑。
【とにかく目の前のものを減らすのが急務だから、少ない予算は捕獲の方に回して・・・という行政の現場の苦労する様子が伝わってくるようだ】
モニタリングの手法についても、個体数推定を行う自治体もあれば、数の推定は行わず増減といった推移だけを見るとしている自治体もある。
【かつて、オオカミ導入を議論しようと呼びかけた豊後大野市に対し「市はシカの個体数推定もしてないではないか、科学的な検討をする前に安易にオオカミ論にとびついた」と揶揄した人がいたが、それはシカ行政の実情を知らない意見だった、ということになる。大分県はそれ以前に特定鳥獣保護官理計画を立てて実施しているし、豊後大野市はその後独自に調査を行った。】
しかし、モニタリングに用いられているシュミレーションや調査手法の精度に疑問があること、中長期予測にそぐわないことが明らかになったシュミレーションに代わる確定的なものがまだ定まらないこと、何より、シカの分布拡大の勢いに調査法の開発が追いつかないということが指摘された。
●生物多様性保全に関して
特定計画では農林業被害対策に注目が集まっていて、生物多様性保全には充分ではない、というのが結論だった。
多すぎるシカが生態系に与える影響について、認識していると分かる特定計画が増えたものの、それを目標にもりこんだ自治体は少ない。
多様性に対する問題を認識し、目標にかかげ、柵などを設置しているのが6、目標には掲げていないが認識がありそのための防鹿柵を設置しているのが2、と全国で8自治体のみ。
「科学的根拠にもとづく順応的管理」が特定計画の最大の「売り」のはずが、「PDCAサイクルが成立していない非科学的で計画性のない状態」になってしまっている実情が報告された。
この状況に対し、研究者はどういう態度で臨めばよいのか、ということで、会場よりコメント
<森林総研の小泉氏>:一般に、科学の成果とその効果がみえてくるまでに時間的ギャップがある。周囲の期待は一気に高まるだけに、すぐに成果がでないことへの苛立ち、攻撃があり、その「アクマの時間」を耐えることができれば成果にいたることができる。研究の展開のノウハウを提示すること。個体群生態学(パラメータを設定し予測を行う)の分野だけでなく、哺乳類学の他分野(動物社会学や生理学的な研究分野)の人も積極的に参画して欲しい。
<兵庫県の横山氏>:現場は行政職員が担当している。研究者と現場担当者が科学的なキャッチボールができているのか。研究者が現場に対してモニタリングの重要性を周知できているのか。個体数を押さえ込むことが最優先になっている。生態系保全の意識、重要性の周知はもっと高めなければ。
<静岡か長野の行政関係者?聞き取れず>:そういう意味では、環境省が旗をふっていて予算もある知床の密度操作実験には期待をよせている。ここで成功例が提示できればそれを全国にあてはめることができる。他の自治体では、予算措置が1年遅れればその分対応が遅れ、その1年分シカが増えてしまい、さらに予算が必要になる、という悪循環になっている。
●全体の印象
ヒトが、研究者という頭脳と、地方という現場の手足で、必死に汗をかいて国を挙げて頑張っているけれども、野生動物であるシカはその半歩先をすり抜けて先を行っている感じ。
ここから分かるのは、もし特定計画でシカ保護管理がうまくいけばオオカミはいらない、という議論の方向性がまとはずれだということ。このままではヒトによるシカの頭数管理という目標は、近いうちにグダグダになっていくといいうことが、かなりの確度で予想できる。
特定計画の行く末の結論が出るのを待って次にオオカミ、では日本の自然はめちゃめちゃになる。
これまでの自然行政の実情を知っている人にとっては、従来なんの手がかりもなく闇雲に進めてきた鳥獣管理に、PDCAサイクルを導入した特定計画は画期的であったし、その方向はもちろん堅持しなければならないと思う。
人がシカとの共存をめざし、同じ国土の中で農林業を続けていく以上、シカ管理は必要であり、シカの根絶を目指さないことも確かなので、特定計画は継続して行うべきだが、、、、
しかし、この計画があるから生態系の修復のためであってもオオカミはまったく考慮にも値せず、不要、というのはおかしいし、この特定計画に中心的に携わっている人が、自分たちの手に負えないという思い込みによって、オオカミの議論さえ忌避するというのは極めて恣意的な論理だということがよく分かる集会だった。
生態系全体を見渡せる学際的な視点をもった新しい研究者がもっともっと必要だし、そこに価値を見い出し、雇用を確保するようなアイディアが官民からでてこないものか。
他にポスター発表による研究成果について
●ニホンジカによる上位捕食者への影響
●ニホンジカの高密度化がネズミ類とその捕食者に与える影響
シカの採食圧によって何が変わるか。
まずネズミの分布が変わる。シカの密度が高まるとネズミの密度は低下する。
捕食者は、ネズミを捕獲する能力と食料に占めるネズミの割合によって、影響の受け方が違う。たとえばフクロウのように、ネズミを主に食べている種は影響が大きく、数を減らしているし、キツネのように必ずしもネズミでなくてもいい動物はそれほど影響を受けない。シカの密度が高くなると一部の昆虫やミミズが増えるため、必ずしもネズミの数が減ったからといってキツネの密度は影響を受けない。
逆にタヌキやアナグマはあまりネズミを捕らえて食べることはしない。むしろ、虫などの割合が高く、ネズミ捕食の能力高くない。当該調査地では、シカの影響により恩恵を受けてタヌキはむしろ増えた。
ここから推測するに、シカの増加によって、フクロウ類は数を減らすが、オオカミの復活によって、ネズミが増えることにより、回復する可能性がある。イエローストーンの観察結果からも、このカスケードは推測できる。
<今回の哺乳類学会での発表内容に関しては、一人の参加によるものを整理したので、不正確な部分があるかもしれないため、参加者の方で異論があればぜひご指摘ください>
(高知)県内シカ捕獲手詰まり |
2012年09月08日08時11分 |
県内で深刻な農林業被害をもたらしているニホンジカの捕獲が、シカの「自然増」に追いつかない状況だ。昨年度、猟銃とわな猟で過去最多の1万3468頭を捕獲したが、県が目標とする「年3万頭」には遠く及ばず、被害額は過去最悪の1億2408万円。昨年度に新設した「広域捕獲実施隊」の事業も効果が薄いと単年度で打ち切られ、対策に手詰まり感が漂っている。 高知新聞 http://203.139.202.230/?&nwSrl=292946&nwIW=1&nwVt=knd 環境省は、狩猟振興でシカを抑えると言い続けてきました。 関わるすべての地域で失敗しているのではありませんか? 今まで多くの研究者や行政の専門家は、「オオカミ」という言葉さえ封印し、タブーにしてきたように見えます。 いかに「オオカミ」「復活」という言葉を使わずに発表するか、汲々としているかに見えます。 |
さ来週、神奈川県相模原市の麻布大学で哺乳類学会の大会が開催されます。
http://www.mammalogy.jp/japanese/
いくつか興味深いテーマが設定されています。
●自由集会W12 ニホンジカの特定鳥獣保護管理計画の現状と課題
演題1 個体数管理の目標設定および達成状況と捕獲の現状 野生動 物保護管理事務所 濱崎伸一郎
演題3 特定計画における生物多様性保全に関する現状と課題 自然 環境研究センター 荒木良太
全国の保護管理計画がどの程度達成されているのか、確認することができるはず。
●自由集会W23 生物資源としての日本犬の意義を捉えよう
演題1 絶滅した日本オオカミの系統 岐阜大 石黒直隆
演題4 動物園におけるパック形成とはぐれ個体の考察 多摩動物公 園 熊谷 岳(多摩動物園のオオカミがテーマです)
石黒先生が行ったDNA解析の結果が発表されたのはもう数年前になりますが、その後の進展が聞けそうです。日本在来犬との交配の可能性についてもお話されるようです。
ブレット・ウォーカーの「絶滅した日本のオオカミ」にも、千葉徳爾をはじめ、犬飼哲夫、直良信夫、平岩米吉等の研究を解説して、日本犬との交配が絶滅の引き金を引いたという仮説が紹介されていますが、実際にDNA解析によって、その仮説の裏づけができるのかどうか、興味を引くところです。
また、多摩動物園のオオカミ飼育担当の方による、飼育下におけるオオカミの行動についての発表があります。
多摩動物園のオオカミ展示は、トラの展示と並んでいて、それぞれに人を集めているのですが、それぞれの動物の前で、観客の反応、話される内容を聞いていると、奇妙なことがわかります。
トラの前では、「かっこいい」「美しい」というような反応をする人たちが、オオカミの前に立つと、子供に向かって「襲われちゃうぞ~」とか、「オオカミは後ろから肩に前足をかけて、のどに噛み付くんだ。だからオオカミに道で会ったら、すぐに走って逃げるんだぞ」とか、とたんに人が襲われる話をし始めるのです。
実際にはオオカミは犬のような、かわいらしい外見をしているし、獰猛さなんて感じないのにね。
野外で会ったらトラのほうがよっぽど怖い存在なんですが、そんなことは観客のイメージの中にはほとんどないようです。
また、ポスター発表には、シカの増えすぎと他の動物の関係、つまり種間関係を対象とした発表があります。
●ニホンジカによる上位捕食者への影響
●ニホンジカの高密度化がネズミ類とその捕食者に与える影響
●カモシカとシカは競合しているか
●岩手県手代森地区におけるニホンジカとカモシカの関係
北アルプスに定着してしまったニホンジカの追跡も
●長野県北アルプス北部におけるGPS首輪を用いたニホンジカの行動追跡
知床におけるシャープシューティングの結果も
●知床半島ルサー相泊地区におけるシャープシューティング
あり、聞きたいテーマがてんこ盛りです。
参加できないのが残念です。
参加者の報告が聞けたら、ここでご紹介します。
メディアの方も、取材されると日本全国が獣害列島と化していることがよくわかっていただけると思います。
そして、こうした学会に参加されれば、いかに有効な対策がないか、ということもおわかりいただけるでしょう。
オオカミ再導入に関しては、こうした学会では議論さえ起きないこともよくわかります。(石黒先生の発表や多摩動物園のオオカミの行動についての発表などは、再導入にどう触れるか、それとも触れないか、注目です)
また、今まで当ブログに取り上げてきたような、アメリカの生態学者が発してきた、頂点捕食者を欠いた生態系がいかに危ういか、草食獣の増えすぎが何をもたらすか、という強い警告を、日本の学者の口から聞くことができるのかどうか、みんなで注視していきたいものです。
「私たちはこんなことをやっている」という報告だけでなく、「状況は許しがたいほど悪化している」と警告を発するのが、研究者や学会の役割ではないでしょうか。
そうした言葉を、私たちは聞きたいのです。
実際に、状況は許しがたいほど悪化しています。
徳島と高知の県境に三嶺(みうね)という山があります。三方から尾根が集まっているピークだから三つの嶺、徳島側からは「みうね」、高知側からは「さんれい」と読むそうです。
地図上では、東へ尾根をたどると徳島の明峰剣山、南へ下ると白髪山、東南方にたどると石立山です。
下のブログに、この三つの山の山頂付近の様子がレポートされています。
三嶺(みうね)の森をまもるみんなの会ブログ
http://sannreiminnnanokai.blog.fc2.com/
カヤハゲという地点には、5つの防鹿柵が設置され、その柵の中だけで植生が回復しています。悲しい光景です。
三嶺の森をまもるみんなの会HP
http://sanreiminnanokai.web.fc2.com/
四国の島の西側にも同じような場所があります。
四万十川の支流黒尊川の源流に三本杭山山頂です。地図上では鬼が城山を経て宇和島方面に下るルートがあるようです。
数年前に森林総研が山頂の調査を公表し、シカの食害が公に知られることになりました。
森林総研四国支所 滑床山(三本杭山)黒尊山国有林のシカの影響
http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/sm/sm9/sm9_4-5.pdf
その後の動静はわかりませんでしたが、どうやら山頂周辺に防鹿柵を厳重に張り巡らせて植生を保護することにしたようです。
その保護の結果がこのレポートに報告されています。
http://www.rinya.maff.go.jp/shikoku/simanto_fc/pdf/sinsen32.pdf
この文書の中には、植生の回復状況の報告とともに、防鹿柵の出入り口の写真が掲載されています。
アメリカでシカの食害にあった森林を前に、ジョン・ターボー博士はこう言われたそうです。
(ポトマック河畔は)戦火に焼かれたようだった。森の大部分は食い尽くされて地面がむき出しになっていた。もはや森の亡霊と化していた。すべてはシカのせいなのだ(ジョン・ターボー=プリンストン大学教授)
彼が見ていたものと同様に、四国の大地は「森の亡霊」と化しています
すべては、シカのせいなのだ。さらにさかのぼれば、生態系のコントローラーであるオオカミを絶滅させたせいなのだ。
●食物網をパトロールする捕食者がいない状況下で、「私たちが守ろうとしているのは、自然がみずから管理できる自立した生態系でなく、既に崩壊し、自力では立ち行かなくなった生態系なのだ」(進化生物学者ジャレド・ダイアモンド)
「捕食者なき世界」(ウィリアム・ソウルゼンバーグ)は日本への教訓に満ちています。
この本に書かれていることは現在の、あるいは数年後十数年後、数十年後の今の日本です。
著者は、数十人の研究者にインタビューを試み、様々に印象的な言葉を引き出し、そして文章にしています。日本の自然の現状を思い浮かべながらかみ締めて吟味したい重い内容を含んでいます。
この本を通じて、アメリカ人の研究者たちは、こう訴えています。
「生態系は複雑で、頂点捕食者を欠いた生態系では何が起きるのか、まだわかっていない。現在のところ、これほど人間にとって悪い影響が出ている」
ところが、ここに描かれたのと同じことがおきている日本では、頂点捕食者について研究者や、環境行政の専門家でさえ逆のことを言います。
「生態系は複雑で、オオカミを野生に戻すなんてことをすれば、何が起きるかわからない。検討の俎上にも上げられないし、考えることさえするべきでない」
どちらが正しいのでしょうか。
この本を自然保護に関心のある誰もが読んでほしいと思います。
私自身もこの本に登場する研究者一人ひとりに尋ねてみたい。日本の自然を見たときにどう感じるか。
尊敬すべきアメリカの生態学者たちのインタビュー、あるいは調査結果の記述を、日本の各地の状況と比較してお読みください。
●(ポトマック河畔は)戦火に焼かれたようだった。森の大部分は食い尽くされて地面がむき出しになっていた。もはや森の亡霊と化していた。すべてはシカのせいなのだ(ジョン・ターボー=プリンストン大学教授)
⇒天城山
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/34323886.html
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/34299072.html
●(シカに荒らされた)そのような森はいくらでもある。メリーランド州のカクトテイン山脈国立公園、ヴァージニア州のシェナンドーア国立公園、テネシー州のグレートスモーキー山脈国立公園、コロラド州のロッキー山脈公園まで行ったとしても、シカやワピチの群れが何者にも邪魔されず森の次世代を担う若木を食べている。(ジョン・ターボー)
⇒神奈川県・丹沢
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/32829787.html
●オジロジカは、適応力があり、雑種のようにたくましく、驚くほどの広食性の草食動物で、草、つぼみ、花、胞子、果実等々、多種多様な植物と菌類を食べる。本来多産な動物で、栄養状態がよく、捕食者に追われることがなければ、生後1年たたないうちに子どもを産み、壮年期には一度に2頭から3頭を出産し、環境に恵まれれば、オジロジカの群れは2年で二倍に増える。
●「仕事であれプライベートであれ、ドイツの森を巡っていると、誰でも数日たたないうちに、狩猟鳥獣と森林を人為的に管理すれば結局鳥獣も森も破壊してしまうことに気づいて暗い気持ちになるだろう(アルド・レオポルド・1935年ドイツに招かれたときの感想)
⇒山梨県・早川町
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/33129583.html
●(ウォラー、アルバーソン:ウィスコンシン大学の3人の若い植物学者のうちの一人)「わたしは幼いころからイトスギの茂る沼地は手入れされた公園のように林冠が開けていてずっと遠くまで見渡せる場所だと思っていた」が、「ところがメノミニ先住民居留地では1.5m先も見えなかった。イトスギの若木が茂っていたからだ。なんてことだ!これがイトスギの茂る沼の本来の姿なんだ」
⇒三重県・紀伊半島
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/32839430.html
●ヴァージニア州西部にあるモノンガヒラ国有林の奥深く、これといった特徴のない盆地には、アメリカにおける希少ラン保護の未来を象徴しそうなものが立てられてる。そこは国内で新たに二ヶ所見つかったアメリカアツモリソウの自生地の一つだが、そのランは、サメ除けの檻に入ったダイバーのように高さ2.5mのフェンスでシカから守られているのだ。(ウェスリアン大学のラン専門家・キャシー・グレッグの調査地)
⇒高山植物はオリの中
http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2012/05/post-0585.html
●(引退していた野性動物生態学者アール・ホーネットが集めた狙撃手らは)夜陰にまぎれてハントリーメドウズ公園に入っていった。頭上ではヘリコプターがホバリングし、サイレンサーをつけた高性能ライフル、赤外線暗視スコープでシカの頭に狙いをつけ、一発で仕留めた。射撃が始まるとシカの数は減り始めた。と言っても、我慢ならないほど多かったのが、途方もないほど多い に変わった程度だった。
⇒知床ルサ地区におけるシャープシューティング
http://hokkaido.env.go.jp/kushiro/pre_2010/1125a.html
●食物網をパトロールする捕食者がいない状況下で、「私たちが守ろうとしているのは、自然がみずから管理できる自立した生態系でなく、既に崩壊し、自力では立ち行かなくなった生態系なのだ」(進化生物学者ジャレドダイアモンド)
●(100年ほど前に軽率にも本土の人が島にオグロジカを数頭放ち、過剰繁殖という生態学の放置実験を始めてしまった)ハイダグワイの森では、50年以上にわたってシカに若芽を食べられた結果鳴鳥の種の最大4分の3が消え昆虫の種は6分の1に激減した。多くは花粉の媒介者なので、植物が実を結ばなくなる。ハイダグワイの荒廃を見た研究者は鳴鳥と昆虫の衰退はシカのせいだと考えるようになった。(フランスの生態学者ジャン・ルイ・マルタンの調査地)
●「今わたしたちにいえるのは、捕食者を締め出すと高くつくということだ。森林野生動物も犠牲になる。オオカミを追い出すと、鳥や植物など多くのものを失うことになるだろう。なぜなら、オオカミが自然を管理しているからだ。驚くかもしれないが、わたしたちが調べたことをよく検討すれば、誰でも、過剰なシカがもたらした問題をオオカミは確かに解決するし、場所によってはそれが唯一の解決策なのだと悟るだろう」(フランスの生態学者ジャン・ルイ・マルタン)
●10年がたち、ウォラーとアルバーソンは再び同じテーマの論文を発表した。数々の証拠を集め、「状況は許しがたいほどに悪化している」と、前にも増して厳しい口調で警告した。森をくまなく調査したが、どこでも古木だけで若木は育っていなかった。森はゆっくりと死に向かっていた(ウォラー、アルバーソン)
●(若い3人の植物学者は)「シカが増えすぎた森:ウィスコンシン北部への周辺効果」1988ウィスコンシンの森で見たことに加えてネブラスカやペンシルバニア、ロングアイランドの研究からも証拠を引き出した。種の絶滅、森の衰退、ライム病の蔓延、すべてにシカの過飽和があった(ウォラー、アルバーソン)
⇒屋久島
http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2012/03/post-7b6e.html
●肉食動物がいなくなり、ハンターが締め出され、草食動物にとって唯一の危険因子が自動車だけになった森は、どこも深刻なダメージを受けた。そのような状況がほとんどの国立公園で起きていた。シェナンドーア国立公園のビッグメドウ湿地のシカは、個体密度が1平方マイル150頭から200頭にもなり、キャンプ客が与えるスナック菓子で肥え太った。公園を管理する生物学者は、世界でその湿地にしか生えていない希少な植物群落を守るために緊急出動した。シェナンドーア公園の野生動物を研究するロルフ・グブラーは「わたしたちはモンスターを作ってしまったのだ」と嘆く。
滋賀県高島市朽木 下層植生が失われて昆虫が半減している
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120807ddlk25040510000c2.html
滋賀県高島市朽木 シカが下草を食べ、低木の枝葉を食べ、亜高木の樹皮をかじり、高木を這(は)うツル草を食べ、さらには落ち葉まで食べているという
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120807ddlk25040510000c.html
●テネシー州グレートスモーキー山脈国立公園の西側にある渓谷、ケーズコープは毎年200万人の観光客が訪れるが、そこで貴重なものが失われつつあることに気づいている人はほとんどいない。1940年に公園が開設されたとき、ケーズコーブはエンレイソウやスプリングビューティが多いことで知られていた。しかし現在、植物学者はエンレイソウを探すのに苦労している。1970年に記録された野性の花のうち、46種が2004年までに姿を消した。すべてオジロジカが好む植物だった。
ちょっと変だぞ日本の自然~奥日光の自然が大ピンチ
http://www.youtube.com/watch?v=CcWF7HjZfM8
●弱いオオツノヒツジは群れの仲間に比べて逃げ足が遅く、持久力もないため、おのずと最初のエサになる。捕食によって弱い個体や病気の個体が除かれるので、一見有害に見える捕食者の存在が、長い目で見れば種にとって有益になると一般に考えられている(野生生物学者アドルフ・ムーリー)
●(リップルとペシュタの調査では)グランドティトン国立公園では、長年にわたってオオカミとハイイログマとハンターがいなかったためヘラジカの密度が5倍になり、川沿いの森はぼろぼろになり鳴鳥の多くが姿を消した。ところがYSのオオカミがやってくるようになると鳥たちも戻った
●(YS)「ヤナギやハアコヤナギやポプラはワピチの食べられる高さから上は成長できなくなっていたが、今では回復しつつある。すべてはある出来事と同じ時期に始まった。オオカミの駆除と導入だ」
●数十年後には、エバーグレーズ国立公園の湿原の生態系にとっての水と同じくらい、イエローストーンにとってオオカミがかけがえのない存在であることが証明されるだろう」(ダグラススミス・再導入を実際に手がけた研究者)
⇒長野県知事の答弁
http://blogs.yahoo.co.jp/pondwolf39/35456638.html
新しい種を導入することは、生態系の撹乱要因になるので、慎重に考えなければならない
●「私はこれまでの研究人生を通じて、オオカミが川の性質をコントロールしているなどとは予想もしていなかった。人生を通じて川のために働いてきたが、ここでは四足の動物がそれをやっているのだ。じつに驚きだった。オオカミが川を管理していたのだから」(ロバートペシュタ:水生生態学者)
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「捕食者なき世界」に見る景観は、そのまま今の日本です。日本の地名を置き換えればそのまま通じます。日光、大台ケ原、天城山、屋久島、霧島、祖母傾、櫛形山、雲取山、和名倉山、南アルプス、そのうち北アルプスも白神もその列に加わることになります。捕食者のいる生態系を再構築しなければ。