長野県ニホンジカ保護管理計画 特に植生衰退度の調査結果は恐ろしい
3月に、長野県のニホンジカ管理の新たな計画が発表されました。
長野県第二種特定鳥獣管理計画(第4期ニホンジカ管理)
http://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/dai4kisikakeikaku.html
長野県は下記のような地域に分けて管理しようとしています。
そのうちサンプルとして八ヶ岳ユニットだけかいつまんで考えてみたいと思います。
各ユニットの推定生得頭数は糞粒法による調査では
こうなっています。
八ヶ岳では、79,611~177,585頭、中央値で128,598頭です。
これに対して、捕獲スケジュールでは、
です。
年間24,000頭の捕獲を続けていくと、中央値128,598頭のシカが5年後に34,000~76,000頭に減るのだそうです。
・・・・・
私には、この捕獲頭数で半減するという計算式は、見当がつきません。
本当にこの計画でニホンジカは減るのでしょうか。
仮に中央値128,598頭を採用して、その頭数が正しいとします。
おおよその年間増加率は20%と言われていますから、24,000頭は確実に増えます24,000頭の捕獲では、増加分を減らすだけです。
メスが14,400頭と多くなっていますので、出生率が減るという計算をしているのでしょう。しかし、雄雌の比が50%であれば少し出生は抑えられることになりますが、60%が雌だったら出生率の減少にもなりません。
この計画で本当に減るのでしょうか?
環境省だって言っているではありませんか。
いまの2倍以上獲らなければニホンジカの生息数は減らないって!
ここに長野県のシカ生息数の歴史的な変遷をグラフ化した図があります。
出典は、長野県林業総合センターの方が書かれている、この報告です。
ニホンジカの食害による森林被害の実態と防除技術の開発
http://www.pref.nagano.lg.jp/xrinmu/ringyosen/01seika/01kankoubutsu/02kenkyuu/024/iku-24-1.pdf
この図は、「模式図」と名づけられているように、頭数の推定をしているわけではありません。この報告書だけでは、この推定「模式図」をどのような根拠で描いたのかは、不明ですが、文章から推察するに、獣害やシシ垣の建設年代といった古い記録を元にされているのではないかと思われます。諏訪大社の記録や藩の巻き狩りの記録等も見ることができたのでしょうか。
このグラフは時に、オオカミが日本にまだ存在していた時代に、オオカミがシカを抑制することができていたか否か、という疑問への答えとして使われることがあります。これほど増えていたのはオオカミが天敵として機能していなかったからだ、というわけです。
今までは、そうなのかなあ、という程度で、答えが見つかりませんでしたが、最近信州の江戸時代の状況を調べるにつけ、このグラフはむしろ、オオカミがいてシカを抑えてきたことを示しているのではないか、と考えるにいたりました。
(オオカミがいる地域での)捕食者がいる環境といない環境、それぞれの環境でシカの増減がはっきりし、対照する材料が蓄積されてきたためです。
捕食者のいる環境で、シカの頭数は、増減を繰り返しながら一定の範囲に収まってきます。
それはイエローストーンの実験が示しています。
http://nikkokekko.cocolog-nifty.com/wolf/2012/11/post-f5ad.html