宇野裕之教授の「エゾシカの高齢化」「次世代が育たないエゾシカ」説への疑問 in「野生の営みのダイナミクスに迫る~世界遺産シリエトクのヒグマとエゾシカ」
先日知床世界遺産登録後の「遺産価値向上」のための研究開発プロジェクトの「野生の営みのダイナミクスに迫る~世界遺産シリエトクのヒグマとエゾシカ」
シンポジウムが開催されました。
https://www.hro.or.jp/info_headquarters/domin/press0128.pdf
講演者は
山中正実(知床財団)
下鶴倫人(北海道大学)
白根ゆり(北海道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所)
石名坂豪(知床財団)
宇野裕之(東京農工大学)
といった方たちです。講演テーマはHPをごらんください。
興味深い研究成果がいくつもありましたが、その中で私が注目したのは
【エゾシカの生存戦略〜なぜ高密度が維持される?(宇野 裕之/東京農工大学 教授)】
です。
話の流れは、
・エゾシカは高い繁殖力を持ち、メス成獣の妊娠率はほぼ90%
・成獣の冬季生存率はほぼ90%
この二つがメスジカの生存戦略である
➡一方幼獣は冬季死亡が多く、ヒグマによる捕食が確認されている。
と調査結果を示したうえで、「まとめと今後の課題」と題して
・知床のエゾシカ集団は高齢化社会になりつつある(かもしれない)
理由は幼獣の生存率が低く次世代が育たないからである
今後の課題として「保護管理方針を見直す必要も出てくるかもしれない」と結んでいました。
それを聞いて数々の疑問が沸き上がってきました。
・エゾシカが減る原理を見つけたということではないのか?
・つまり肉食獣による捕食はエゾシカを減らす効果があるということでは?
・次世代が育たないとはどの程度のことを言っているのか?
・幼獣の生存率が低いというが、9割のメス成獣は毎年1頭子どもを産んでいるのでは?
・幼獣の冬季死亡率が高いのは寒冷地のシカでは一般的だと自分で報告しているが、
・高齢化社会とはどのような現象を指すのか?
しかしよくよく考えてみると、同じような現象の報告がイエローストーンから出ていたことを思い出しました。
イエローストーンへのオオカミ再導入の20年の総括を公園局が報告した論文集です。
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