説話・物語

2020年5月22日 (金)

荒俣宏信州でオオカミの話を聞く(トランヴェール)~抜けている生物学の視点

もう2年も前になりますが、新幹線の座席に挟まっている雑誌「トランヴェール」(2018年7月号)に荒俣宏先生が信州で訪ねて珍しいものを訪ね歩く企画記事が掲載されていました。ちょうどその時期に新幹線移動の機会があり、持ち帰ってきたものです。


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記事中、荒俣先生は信州を訪ねて「ニホンオオカミ」の伝承について博物館員から聞き、
「実際の記録を見るとやっぱり危険な存在なんだ」おばあちゃんから聞き取るのは「オオカミの子がかわいかったよね、といった、いわば例外的なエピソード。」「歴史学で扱う文献記録は、実際の出来事、事件についてのものだから、襲われた話が記録されがちじゃないか」
と解説をされています。
民俗学と歴史学のアプローチの仕方は確かに違うようです。


この記事を読んだ私は、荒俣先生に疑問をぶつけたいと思いながら、連絡先がわからずそのままになっていました。資料を整理していたらたまたま出てきたので、読み返したところです。
このブログのつぶやきが荒俣先生に届くかどうか、まあまったく届かないと思いますが、書いてみます。

荒俣先生、「オオカミ」という動物についての記録、文献なのだから「生物学」の視点も必要ではないですか?歴史学も民俗学も生物学の視点がまったく欠けていますよ。
 

2020年5月15日 (金)

遠野物語のオオカミ~江戸時代まで東北に多数の野犬が群れていた可能性あり

柳田國男の「遠野物語」にもオオカミが登場します。

36、37、38、39、41、42話がそれです。そのなかに明らかにオオカミではない動物が描かれている話があります。

37話
ある時二、三百ばかりの狼追い来たり、その足音山もどよむばかりなれば、あまりの恐ろしさに馬も人も一所に集まりて、そのめぐりに火を焼きてこれを防ぎたり。されどなほその火を躍り越えて入り来たるにより、つひには馬の綱を解きこれを張り回らせしに、落とし穴などなりと思ひけん、それより後は中に飛びいらず。遠くより取り囲みて夜の明くるまで吠えてありきとぞ。


41話
向こふの峰より何百とも知れぬ狼こちらに群れて走り来るを見て恐ろしさに堪へず、樹の梢に登りてありしに、その樹下をおびただしき足音して走り過ぎ北方へ行けり。


恐い話ですよね。
でも、これはオオカミではありません。
何百という狼が集まることは生物学的にありえないことだからです。オオカミは強固な広いナワバリをもち、家族単位で暮らす動物です。この行動が崩れることはあり得ません。


犬の集団であれば、血縁関係に関係なく集まるためその可能性はあります。
前回の記事、只野真葛の収集した「赤毛、白毛、白黒斑の」山犬というエピソードや山津見神社のオオカミの天井絵に白黒斑や白毛のオオカミが描かれていることなども考えあわせると、東北地方にはオオカミではなく、野犬が集団を作っていた可能性が考えられます。