環境省

2021年6月10日 (木)

環境省ニホンジカ推定生息数の変更

 

環境省がニホンジカの推定頭数を変更したようです。

最近になり、改めてチェックする必要があり、環境省のHPを確認したところ、1年前とは数字が変わっているのを発見しました。

令和3年3月26日
第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編・イノシシ編)の改定について


という報道発表で初めて公表されたもののようです。

「個体数推定は、新たな捕獲実績等のデータを追加して行うため、過去に遡って推定値が見直される。今後の毎年の個体数の推定値も、数十万頭レベルで変わってくる可能性がある。」

(令和2年8月24日第2回鳥獣の保護管理のあり方検討会
参考資料2「指定管理鳥獣、指定管理鳥獣捕獲等事業、認定鳥獣捕獲等事業者に関する近年の状況」にある但し書き)

と推定値のグラフに但し書きがあります(このときはまだ数字は元のままです)ので新たなデータが加わって数字が変更されたのでしょう。おそらく。

Photo_20210610213201  20213   

もっと大きな声、文字で「数字が変更されました!」と叫んでほしいものです。

 

このグラフは印象としてニホンジカが減少したように見えるのですが、そうではありません。

ただ、数字が変更されたことでグラフのピークを過ぎて減り始めていることを説明しやすくなりました。

昨年2月にこの文書の検討会議が開かれたときに、検討委員の梶光一氏はこう述べています。

(この発言は議事録にありますので、誰でも閲覧できます)

(梶)推定個体数の図を見るとピークから減少しているように見えるが、利息分(増加分)を捕獲しているだけの状況であると考える。生息数に対して 30%の捕獲圧をかけないと減少には向かわない。特定計画において、個体数が減少したと書いている都道府県は少ない。また、同じ都道府県内でも新しく侵入した地域は数が増えており、そのような地域ではほとんど捕獲データやモニタリングデータが得られていないために、その分が推定個体数に含まれていない可能性もある。減少傾向を示したという結果は見かけだけである可能性もあるため、現状を楽観視せず、非常に厳しいと考えた方が良い。

梶氏は捕獲率の問題を取り上げていました。30%も獲っていないのに減るはずがないと。推定頭数が189万頭に変われば、狩猟捕獲総数は約60万頭なので、簡単に30%を超えてしまいます。これで指摘された問題はクリアだ!とお役人たちが操作したのではないかと妄想が頭をよぎります。
この変更について環境省の報道発表で時系列をさかのぼってみると
 
令和2年8月の「鳥獣の保護管理のあり方検討会 」でグラフのデータが数十万単位で変わる可能性があるとエクスキューズを載せ、
令和3年2月8日(月)に開催された
令和2年度ニホンジカ保護及び管理に関する検討会(第2回)
   
の議事録でもまだ数字は変更されず、
3月26日の報道発表
で突然の推定頭数変更が理由も示されずに数字だけ変わっていました。
梶氏は、
「新しく侵入した地域は数が増えており、そのような地域ではほとんど捕獲データやモニタリングデータが得られていないために、その分が推定個体数に含まれていない可能性もある。」
とも指摘していました。
この指摘には答えず、捕獲率と減少の関係の整合性をとるために、分母を変更した、、、、なんてことがないことを願うばかりです。

 

 

 

 

2019年7月 1日 (月)

2018年9月自民党鳥獣被害/捕獲/食肉利活用合同会議に環境省が提出した「オオカミの導入について」誤りを指摘する

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オオカミ復活論入門

誰でもわかるオオカミ復活を知るためのの理論、歴史、文化、思想

http://www.mag2.com/m/0001681617.html

 

環境省が持っている情報、判断の材料としている情報は正しいのでしょうか。検討もしないで判断するのですから、正しい情報をお持ちだと確信されているのでしょう。

でも本当にそれは正しい情報ですか?

 

 

  • 2018年9月6日自民党「鳥獣被害特別委員会。鳥獣捕獲緊急対策議員連盟・鳥獣食肉利活用推進議員連盟」合同会議

 

ごく最近の話になります。長い名称の会議が自民党本部で開催されました。そこに環境省、農水省、厚労省、経産省、内閣府等の関係省庁が呼ばれ、おそらく2019年度予算の審議のための材料をそろえたのだと思われます。

その中に「オオカミ導入について」という資料が提出されました。もちろん正式の議題としてではないと思われます。正式の議題は、・ニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について・「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」の進捗状況について・鳥獣の現状と対策についての3点です。

環境省がこのオオカミに関する資料を好んで提出したいわけはないと思いますので、自民党側からの要請によるものと、私は推測しています。

 

合同会議資料

 

それがこの資料です。赤字で入れたのは私です。内容としては以前からの答弁内容等と変わりありませんが、こうして一覧にしていただけるとあまりにも間違い、認識不足がはなはだしいのにあきれるばかりです。逐一内容を検証し、検索されるように文字にしておきます。

 

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2019年6月19日 (水)

「オオカミ再導入」が理解されてこなかった理由(2)日本の生物学の歴史

 

欧米の生物学/生態学は、ヨーロッパからアメリカに中心が移り、大きく展開しました。
それはアメリカで特に肉食獣が憎まれ、根絶のために力を注ぐことになったからです。そのための研究が逆に肉食獣の役割をはっきりさせることになりました。

 

では日本の生物学の歴史は、欧米とはどこが違うのか、検証してみます。

ヨーロッパで博物学が盛んになった頃、日本でも同じように珍しいものを収集し、名前をつけ、分類する動きがありました。「本草学」と呼ばれています。
しかし、本草学は近代の生物学に脱皮することはなく、明治維新を境に「本草学」は終焉し、日本はアメリカから導入した「生物学」を習得することになりました。
東大に生物学科が設置され、教授に就任したのはエドワード・モースとアメリカ留学帰りの箕作佳吉の二人です。初めての学生は4人。この4人の学生から日本の生物学は始まりました。

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明治から大正を通じて、東大から始まった生物学は、卒業する学生が増えるにつれて「生物学科」を各地の帝国大学や師範学校に分散させていきます。先んじたのは北大、東北大、京大等です。
各大学でまず着手したのは、主に分類学と生物地理学、つまり日本にいる生物を分類することとどのような生物がどこに分布しているのかという地図づくりです。そして対象となったのは、海に囲まれた日本で豊富に入手できる水生生物でした。東大が三崎に臨海実験所を設立し、続いて北大、京大も臨海、臨湖実験所を作ります。
大型動物の研究、特に野生動物の研究が始まったのはだいぶ遅く、1920~30年代に研究生活を始めた京大の今西錦司と北大の犬飼哲夫まで待たなければなりません。特に今西錦司は戦前戦中のモンゴル大興安嶺で野生馬に興味をもったと言っています。しかし中断し、1947年、終戦間もない時代に九州でサルの研究をはじめました。私が調べた限りでは、大型野生動物の野外研究は、これが最初の例ということになります。

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「オオカミ再導入」が理解されてこなかった理由(1)欧米の生態学の歴史から


「オオカミ再導入・復活」はゆがんだ生態系の復元のために必要なことですが、日本の学界や環境省にはまだ理解されていません。
それがなぜかを考えていくと、一つには日本と世界(この場合アメリカ)で、動植物の関係性をめぐる学問の世界がまったく違っているのではないかと思い当たります。

学問の世界で、同じ「生態学」(英語ではecology)と呼ばれているものが違うものだとは、なかなか考えにくいことですが、生物学の歴史をたどっていくと、ひょっとしたら、と考えざるをえなくなります。

 

 

欧米の生物学は、博物学から始まりました。十字軍の遠征や大航海時代を経て、様々な珍しい文物がヨーロッパに集まってきたところからです。
収集されたものに名前をつけ、分類することが近代の生物学の歴史の始まりです。

その後、欧米各国による世界探検が始まり、標本が入ってくるだけでなく、標本の動植物が実際に分布している現地へ博物学者が遠征する時代がやってきました。その代表的な人物がフンボルトです。フンボルトは生物地理学の創始者であり、生物の分布を世界規模で【面】としてちらえ、地球環境や気候との関係で考えました。

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約60年後、ダーウィンはフンボルトから影響を受けて行動を起こしました。ビーグル号の探検に同行したのです。その成果として得たものが進化論のヒントでした。生き物は長い【時間】の中で進化して、今のような種と分布につながるのだ、という進化論は、種の多様性や分布を理解するために時間軸を取り入れました。

「種の起源」出版から66年後、イギリス人チャールズ・エルトンは「動物の生態学」を出版しました。

そこで彼が明らかにしたのが「食物網」「食物連鎖」、つまり自然界は捕食者/被食者、食べる/食べられる、上位者/下位者という関係性で作られているということです。生き物の多様性はただ横並びになっているだけでなく、捕食/被食という【タテのつながり】があることに気づいたのです。

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2019年6月18日 (火)

環境省のオオカミ再導入への一貫した姿勢【議論しない、させない、テーブルに載せない】

 

環境省の姿勢は一貫しています。それを時間を追って検証しています。

 

  • オオカミ再導入への一貫した姿勢【議論さえしない、させない、テーブルに載せない】

 

環境省のオオカミ再導入に関する態度は一貫しています。

2010年ごろ山岳雑誌ヤマケイの鳥獣被害の特集記事で、複数の環境省職員のトーク記事に当時の鳥獣保護課の課長補佐が「議論の俎上にもない」と断言するのを読みましたが、その「議論さえしない」態度も一貫しています。

たとえば2017年に様々な登山者の団体が集まって作っている山岳団体自然環境連絡会が主催し第1回 山岳自然環境セミナー「―山の自然が崩壊する―深刻化するニホンジカの被害」が開かれました。(2017年3月11日(土))

開催主旨は各地での二ホンジカの個体数急増を受けて、「国立公園等の被害の現状、捕獲作業の状況、人間との共生、登山者から見た問題点などを紹介し、山岳地における二ホンジカ問題の緊急性を強く訴えるとともに、被害対策の促進をはかることを目的として開催」するとしていました。

参加パネラーは環境省自然環境局国立公園課・専門官:笹渕紘平、林業者であり狩猟者である(株)柳沢林業・代表取締役:原 薫(女性)環境省南アルプス自然保護官事務所・自然保護官:仁田晃司、(一財)自然環境研究センター・上席研究員:青木 豊、モデレーターとして山岳団体自然環境連絡会・代表幹事・花村哲也といったメンバーでした。

パネルディスカッションの場面ではこの方たちに加えて酪農学園大学の伊吾田教授も顔を出していたと記憶しています。

 

環境省の一貫した姿勢がパネルディスカッションの冒頭で暴露されました。

最初の発言者原薫さんが、一言目に「オオカミ!」と叫ぶように言ったのです。聞いているこちらは、「お、オオカミが最初に来るのか」と期待したのですが、その次に続くコメントは「オオカミの話題には触れないと事前の打ち合わせで申し合わせたのですが」でした。

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